| FORUM'99 |
| ■パネルレポート1 「温泉と地域経済-その活性化をさぐる」 山梨県ワイン酒造組合会長/本坊酒造(株)マルスワイナリー取締役山梨工場長 橘 勝士 昭和13年生まれ。 山梨県ワイン酒造組合会長。本坊酒造株式会社取締役山梨工場長。 歓楽温泉地は日本の工業化社会、商業主義社会の高度成長と共に大きく発展して来ました。1992年のバブル経済の崩壊と共に、それまでの右肩上りの成長経済から、右肩下りのデフレ経済への転換が歓楽温泉地を直撃し困難な時代に突入しました。 石和温泉郷に歓楽温泉地としての成長と凋落を見ることが出来ます。 昭和36年、葡萄畑の中に温泉を偶然掘り当て、その温泉水を川に流し、その川を堰止め突如として露天風呂が出現し、近隣界隈の人々が露天風呂を楽しんで有名になりました。それから成長に成長が続き約150軒のホテル、旅館、マンション等が出現し、年間350万人もの来客数を数える大観光地に成りました。 日本経済は昭和30年代から高度成長期に入り、企業は生産性の向上、大衆は電化製品の利用による余暇の増大、モータリゼーションによる移動の広域化等社会環境の変化が進みました。 ホテルの近くに駐車場の在る新興温泉地はバスなどで大量に移動する法人客、パック旅行客に便利な存在です。 ホテル、旅館は汗さえ流せば良いデラックス浴場、大宴会場とアフター宴会のためのクラブ等を充実し、お客を館内に取り込み、利益のひとり占めを計りました。これに対し、お得意さまを招待する法人、社員旅行、パック旅行の主催者側はお客様の安全というキーワードで利益が一致し、大きく発展したと考えられます。 1989年11月のベルリンの壁の崩壊に象徴される冷戦構造の終焉はデフレ経済に突入しました。デフレ経済は心の時代に成ります。 裕福に成った大衆の成熟化社会は、個の時代、多様性の時代と云えます。 温泉地や温泉宿は身体を休め、心を癒す日本古来の湯治場や温泉街の先人の知恵と、ヨーロッパの社交場としての飲泉場やフィットネス施設のある温泉を見習う時に来ていないでしょうか。 山梨県の温泉数は、県が許可した数で、平成9年6月現在で454ヶ所も有ります。全国の温泉は無数に有り、最近の傾向として一億円創生事業、ウルグアイ・ラウンド対策費の農業予算で自治体が温泉を掘った自治体経営温泉も数多く在ります。 多数の温泉の中での「温泉と地域経済―その活性化のためには」企業経営の条件、人、物、金、情報の活用かと考えます。 金は全国どこでも同じですが、人、物はその土地特有のものです。情報は人により価値が出ます。この固有の地域資源の活用に磨きをかけ、耕し、個性豊かな魅力ある温泉地造りが必要です。 甲府商工会議所の会員事業所15社の20〜50代社員を対象に国内外の「観光」に対する意識調査(平成10年1月)の結果の一部を引用すると 設問、観光旅行に行く時、どのような点を考慮しますか?(複数回答) 1位 その土地の食べ物が54.2% 2位 温泉が52.6% 3位 旅行代金が安い47.1% 4位 自然景観31.1% 5位 歴史・文化・芸術28.6% 設問、あなたが県外の方を、山梨県内で案内するとしたらどこにしますか? 1位 景勝地57.9% 2位 温泉地52.4% 3位 美術館、博物館等文化施設43.9% 4位 果物・山菜とり等34.4% 5位 工場見学38.2% 両質問に温泉は2位でしかも50%を越えています。正に有望産業です。 中央自動車道の笹子トンネルを抜けるとパアーッと明るい夜景は石和と甲府です。 石和町の人口は約25500人ですが、4万人の町の輝きがあります。石和町のビジター360万人は1日に換算すると1万人です。この1万人はお金を使う人達です。この消費が人口2万強の町を4万人の町の経済規模に押し上げるのです。 ビジターを増すには人の喜び、楽しさを醸す、夢、未知なる物への好奇心、五感の刺激と休息、コミュニケーション等の醸成が大切です。 @ 地域資源の活用によるその土地ならではの食べ物などを深く耕すこと。 A 地域を愛し、誇りとする人材育成による地域文化創り。 B コミュニケーションの場としての温泉場 C 温泉客が楽しめる健全性の中にチョッピリ卑猥性のある温泉街の育成。 D 日本古来の温泉地の復活。 温泉というキーワードに地域資源を活かし、人々が再び訪ねたくなる地域文化創りが肝心と思う次第です。 |