REPORT一覧 | |||
その他の研究会(過去の実績) 保養地療法の実際と効果-アレルギー FORUM'90より |
|||
大沢 雄二郎 群馬大学保健管理センター助教授 |
|||
はじめに アレルギー性疾患に対する保養地療法の発表は,ヨーロッパ(特にフランス)には多いが,わが国ではわずかである。該療法について,諸家による報告とその紹介,及び筆者らの成績を合わせ,いささか述べる。なお,ヨーロッパの研究報告の記述には,大島,野口,阿岸,谷崎の各氏が紹介された内容の一部を引用させていただいた。 アレルギー性疾患の保養地療法に関連する動物実験成績 一部を記す。仏で,Bil1ard(1912年)はモルモットを馬血清で感作し,食塩重曹泉を2週間腹腔内注射したのとしからざるので惹起注射すると泉水注射しないのは全例死亡と報告,Vi11aretら(1929年)はブタの摘出した気管のアセチルコリンによる収縮をMont-DoreやBourbou1e〔いずれも食塩重曹泉〕の泉水は緩解すると発表し,Traverseら(1960年)はモルモットのヒスタミンショックをCauterets〔硫黄泉〕の10日間の泉水の,吸入,注射ないし飲用が予防効果を示すと述べ,モルモットのヒスタミン吸入による気管支けいれんを,Santenoiseら(1964年)はUriage〔硫化水素泉〕の泉水の3週間の皮下注射が明らかに軽減させ,Grandpierreら(1965年)はLuchon〔硫黄泉〕の泉水の吸入,Robert(1967年)はMont-Dore〔食塩重曹泉〕の泉水の吸入,がいずれも軽減ないし低下させることを認めている。 わが国でも,大島は,放射能泉2週連浴がマウスのヒスタミン感受性を低下させ,大塚10)は冷水浴或は温水浴によるモルモットのヒスタミン感受性を調べ,連浴2週で低下と述べ,東大の岡本は,モルモットを食塩泉或は対照淡水の3週連浴で泉浴は対照浴と異なりヒスタミン感受性を低下させ,また,血清ヒスタミナーゼ活性は,泉浴の初期と中期で低下するが,3週間目には恢復し淡水浴では3週目に低下と報告。九大の岡本はウサギを馬血清で感作し,3週後より2週間食塩重曹泉で連浴せしめるとアルサス反応は,連浴前より連浴中に抑制されると発表し,渡部も前述岡本の実験系で飲泉せしめたウサギでアルサス反応の抑制を認めている。筆者らも,モルモットの肺におけるヒスタミン感受性の低下が酸性泉〔草津温泉〕の3週連浴で生じ,同様結果が含重炭酸土類石膏泉〔伊香保温泉〕でもみられ,つぎに,モルモットを単純泉〔浅間温泉〕で3日,1週,2週,3週と連浴せしめ,それぞれの連浴終了後に,抗卵白アルブミン家兎血清の腹腔内注射で感作し24時間後惹起注射すると図1に示すように,全身性アナフィラキシー反応が,泉浴2週連浴群では対照淡水浴群より明らかに抑制され,同様成績を酸性泉連浴でも認め,また,伊香保温泉で2〜3週連浴させたモルモットをrecipientとするPCA反応(抗原卵白アルブミン)が抑制され, 図1 モルモットの被動性全身性アナフィラキシーに及ぼす浅間温泉浴の影響 淡水浴 浅問温泉浴(単純泉) 浴前 対照 ●●●●● 3日 ●●●●○ ●●●●× ●印死亡 7日 ●●●●● ●●●○○ 14日 ●●●●● ●●××○ ×印症状(+) 21日 ●●●× ●●●× さらに,群馬大の七条が発見し名付けた本邦で代表的な職業性喘息であるコンニャク喘息の起因抗原のコンニャク舞粉を,田中の方法で1日1時間計6時間吸入せしめ作成したモルモットの実験的コンニャク喘息において,抗原の感作前,感作中,感作後,およぴ感作誘発後のいずれの時期にも,伊香保温泉連浴3〜4週では,無入浴対照,淡水浴連浴と異なり,感作抗原吸入による喘息様呼吸困難発作出現率は,図2に示すように低下し,また,かかるモルモットで試みたBoyden法による赤血球凝集反応による血中抗体価も低下し,温泉浴は感作にも喘息誘発にも抑制効果を示し,アレルギーに対して予防的・治療的効果があることを実験的に確認している。 アレルギー性疾患の保養地療法の成績 A.皮膚アレルギー: 1.アトピー性皮膚炎一主に乳幼児期に発病し大多数は成人期迄に治るが,慢性化を防ぎ早く根治させるため一般療法(外用剤使用等)と併用し温泉療法がなされる。 仏では,最近,Bai1letはRoche-Posay〔カルシウム,セレンを含む重曹泉〕の連浴21日目に,232名の患者のうち全治12%,病変の大部分消褪を51%に認め,PrabomeauらはAvεne〔微量の砒素,亜鉛,リチウム等含む塩類泉。海抜365米。気候は温暖〕の浴(28℃で1回10分以上)と飲泉(1日量1/2〜2/31)並びに気候療法の1〜2クール(1クールは21日間)終了目に,31名の患児のうち過半数で著効,大多数で使用薬ヘリ,1年後も20例で改善と報告。 本邦では,総じて,硫黄泉,酸性硫黄泉の浴(40〜42℃で1回5〜15分を1日3回,21目間反復)で患者の大部分が病状が改善。最近も岩手県鶯宿温泉〔単純硫化水素泉。川畔〕の連浴(42〜43℃で1日4回,38日間)で有効の成人例の報告がある。乳児では,当初緩和性泉を用いその後緊張性泉にかえる場合がある。かかる浴は,皮疹の性状や患者の体調を考慮し慎重な適用が望まれる。 本症に対する温泉作用は,鎮痒,及ぴ皮疹の,清浄と充血・腫脹・紅斑をとり痂皮形成を促し治癒に導くが,この過程を,仏では,緩和性泉を用い気候療法も応用し保護的に進めるが,わが国では,慢性型はアレルギー因子のほか痒みにもとずく自損的な条件反射の固着という心因も有するので緊張性泉〔山形県蔵王高湯一強酸性硫化水素含有明ばん緑ばん泉。海抜900米一が代表〕の浴で皮膚を刺激し炎症を合理的に進展させ,'皮膚本来の治癒力をひきだし環境への適応力を増強させ同時に痂皮の形成と脱落を進め既述の悪い条件反射を除き再発を防ぎ全治をはかる訓練的治療を行う。なお,患者のIgE値は,皮疹顕著な例や慢性型は高く水治療法で上昇するが皮疹消褪し新しい条件反射が確立すると徐々に正常化する。 2.尋麻疹一仏では,BometはVichy〔17〜436Cの重曹泉。海抜264米。河畔〕の飲泉と浴で,患者32名中15例が全治,11例が軽快と発表。わが国では,特に慢性型に温泉療法が適応され,浴(40〜42℃)では泉質は明ばん泉が効果が最も良いが重曹泉,食塩泉も用いられ,また高温浴(45℃位),或は,微温泉の持続浴も有効である)。本症は季節病の性格も有し,発症は暖候期に多く,寒冷・温熱に過敏な患者もおり,この点,温泉適用上留意する。 本症の温泉による治療効果には,浴の膨疹形成の抑制,膨疹出現に関与の化学的伝達物質であるヒスタミンの固定能増強〔仏のVichy泉で証明〕,温泉による病体の変調にもとずく体質改善,等がかかわると推測される。 B.呼吸器アレルギー: 1.鼻炎−仏では,慢性に経過し,イ.鼻閉がある,或は,喘息を合併するタイプにMont-Dore〔含砒素重曹泉。海抜1050米の山〕,ロ.感染を伴うタイプにLuchon〔硫化ナトリウム型硫黄泉。低山気候〕を適応し,泉水による局所療法(含嗽,吸入,注入等)と飲泉や浴を行う。療養期間は3週が1クール。奏効率はMont-Doreで62%,Lu-chonで45%という。 本症は気候療法の適応とされ,この療法を行う際は花粉症では療養地の花粉飛散状況に注意が大切とされる。気候保養地は大気清浄等の環境をそなえており,ちなみに,アレルギー性鼻炎の有症率〔これにはアレルゲン曝露,アレルギーの遺伝素因,性,年令,環境一人口,大気汚染,気候の地域差一等が関運〕は,筆者の調査で,群馬大学の1987〜1989年度の新入学生のうち,本邦有数の温泉県である群馬県の出身,約730名では,温泉地が少ない平野部出身の14.6%より,温泉地が多い山,高原,山間部の出身者の9.9%がやや低値(両値間に有意差はない)を示す成績を得ている。 2.喘息−以下,a,b,c,の3項にわけ記す。 a.温泉浴と淡水浴の喘息発作に及ぼす影響の比較: わが国では,以前より喘息(診断は医師)患者が少なからず,自身の意志,或は家族のすすめで,温泉場の共同湯や内湯等を利用し湯治している事実は,近年の諸家の温泉地における湯治者の実態調査でも明らかである。この湯治に用いた温泉は民間伝承で喘息に効果があるとされているのもまれでない。しかし,かかる医師不在の湯治の患者病状に及ぽす影響の詳細は明らかでないので,筆者らは,群馬大学第1内科で加療中のアレルギー喘息患者121名(男女よりなる)で,自宅浴(患者自宅での水道水を用いた温浴)と,前述の湯治,或は,旅行で利用した泉浴の喘息発作に及ぼす影響を問診し,図3に示すように,喘息発作ないときは,泉浴が自宅浴より定型的発作を誘発せず,一方,喘息発作中は,泉浴では自宅浴より病状の悪化は少なく,改善も決して少なくなく、総じて,泉浴は自宅浴より非発作時および発作時共,病状への悪影響は有意に少ないことがみられ,かかる温浴で発作に悪影響をみた者はしからざる者と比べ,表1に示すように,あつ湯好き,罹病期間長い等(いずれも,P<O.05で有意),の特徴があることを認めている。 表1 1)あつ湯を好む 2)罹病期間は長い 3)発作型は通年季節型が多い 4)病因にアレルギーと感染の因子の混在或はアレルギーと心因の因子の混在が多い 5)肺気種の合併が多い 6)気象変化、冷暖房、冷水浴などの物理的刺激に敏感の者多い なお,筆者らの下記調査例で,湯治等で入湯した温泉で当人の喘息発作との関係をたずね,発作に悪影響なく改善も期待されるのは,表2に示すように,食塩泉と重炭酸土類泉と考えられると報告。 表2 湯治または観光旅行で利用した温泉 温泉名 泉質 環境 発作に及ぼす影響 湯桧曾 単純 山ろく■1 湯沢 含食塩、芒硝 山ろく■2 丸沼 単純 山地 ■1 湯河原 含石膏、食塩 山腹 ■1 鹿教湯 単純 山峡 ■2 下諏訪 石膏、食塩、単純 湖畔 ■1 浅間 単純 山ろく■1 塩原 含重曹、食塩、芒硝 山峡 ■1○2 鬼怒川 単純 川畔 ■2 磯部 含炭酸、重曹、食塩 平地 ■2○1 水上 単純、石膏 川畔 ■11○5 伊呑保 含重炭酸土類、石膏 山腹 ■17○10◎1 谷川 単純、万膏 山ろく■1 那須 食塩、単純、酸性 山腹 ■2 上山田 単純、硫黄 川畔 ■2◎1 登別 酸性、食塩 川畔 ■201 飯坂 芒硝 川岸 ■2 別府 単純、食塩、炭酸鉄 海岸 ■201 山中 芒硝、石膏 山峡 ■1 指宿 含土類食垣、炭酸鉄 海岸 ■101 四方 食塩 山峡 ■17○6◎4 老神 硫化水素、単純 山腹 ■201 修善寺 食塩 河畔 ■1 川原湯 含硫化水素、石膏 山腹 ■2 瀬波 食塩 海岸 ■1 沢渡 食塩、硫化水素 山間 ■2 熱川 食塩 海岸 ◎1 万座 硫化水素、酸性 高地 ○2 今井浜 食塩 海岸 ■1○1 草津 酸性(含硫化水素) 高原 ■15○11◎3×5△1 伊東 食塩、単純 海岸 ■5○3◎3 雲仙 酸性、硫黄 山腹 ■1×1△1 熱海 食塩、石膏 海岸 ■9○4 忠治 炭酸 山腹 ■1△2 伊豆山 含食塩、石膏 海岸 ○1 調査例80名 ■:発作誘発せず○:発作不変◎1発作改善 数字は経験例数×:発作誘発△:発作悪化 b.気候療法: ヨーロッパにおいて,近年,西独では,約250の保養地中1/5で行われ,特に小児喘息で海洋気候の応用(大気浴,海水浴,海水のふんむ吸入,海岸での散歩)と減感作注射や食事療法の併用が病状改善に効果をあげ,仏も,アレルギー喘息の温泉治療に気候療法を利用し,また,南欧のAcirea1e温泉や東欧のSandanski温泉も,それぞれ温泉地気候を喘息治療に用いている。Sandanskiでは,Petrovskaは,4週間,運動療法等と併用し,患者12名中11例に発作軽快と,9名中8例に抗喘息剤(ステロイドを含む)の大幅な減量を認め,Kostadinovは,工業地帯からSandanskiへ転地後,発作が,成人の23名中12例,小児の10名中3例,で改善をブルガリアの医学雑誌に発表しており,また,Ko1esarらは,12名の患者で炭酸ガスに対する呼吸感受性が,低地(海抜139米)のBratis1ava(チェコスロバキアの都市)より山岳気候のStrbskepleso(海抜1350米)に3〜6週滞在により低下と報告している。 わが国では,小児喘息で鍛練療法(心理面も含む)として転地療法が行われ効果をあげているが,筆者も近年,群馬大学第1内科で加療中のアレルギー喘息患者に気候療法をすすめ,保養地で実施した職業性喘息を除いた16名中12例(75%)に発作軽快を認め(保養地は関東地方の中山気候帯9例,海岸3例で,療養期間は約3週,温泉は用いない)ている。喘息は,アレルギーや自律神経機能異常を有し内部環境不安定のため,気象刺激で順応反応より病的反応,すなわち,呼吸困難発作を起こし易い点で気象病であり,患者からみて気象刺激の,悪いのはさけ良いのを受けるようはからい同時に異常刺激への適応力強化を目的に気候療法が行われる。本療法は,一般に,期間は4週,患者の病状の重篤度や気象への反応,年令等を考慮し,保護気候,または,刺激気候を選ぶが,筆者らは,喘息では,中山気候帯(海抜500〜1500米)は気象刺激はマイルドであり,また,空気の清浄,大気圧の低さが治療上メリットとなり,海岸は一般に刺激的な気候で患者のゆがんだ気象に対する反応の是正の訓練に役立つと考えている。喘息の発病・経過に心因の関与する例は少なからずみられる34〕,が,かかる症例を含め気候療法である転地の,環境変化にもとずく心理面への効果が大きい事実は広く知られている。本療法の効果増強に森林浴〔森の植物の発する芳香であるフィトンチッドは人の心気を爽快にする〕や地形療法は有用と考える。なお,気候療法は本邦では現在,気候保養地の整備のおくれもあり,この療法の普及と効果は今後に期待される。 C.医療としての温泉療法: 仏では,主たる泉質は,食塩重曹泉〔Mont-Dore(珪酸を含有。海抜1050米),Bourbou1e(砒素を含有。海抜850米)〕と,硫黄泉〔高温の狭義の硫黄泉−Luchon(低山)等−,微温の硫化水素泉−A11evard(低山)等−〕の2種で,前者は純アレルギー型,後者はアレルギーに感染を伴う型に適応し,浴,飲泉(1日,1〜数回),吸入を3週間(1クール)行っている。治療効果は,Mont-Doreでアレルギー喘息100名のうち,著効63%,良好(発作はあるが頻度へり容易にコントロールできる)15%,軽快8%,無効2%であり,Bourbou1eで小児喘息205名のうち,著効23%,良好52%,やや軽快22%,無効3%と報告され,また,A11evardでは,成人100名について,浴を1クール3週で3クール行い,著効6例,良好40例,軽快32例,無効22例であり,奏効率は約78%という。 わが国では,矢永は,単純泉の吸入を患者8名に平均56日間行い,病状悪化は皆無で有効6例(有効率75%)と報告し,谷崎らは,三朝温泉において,温泉プール水泳訓練〔水温30℃(冬期32℃)。泉質は単純泉。平泳を1回30〜60分を週4回〕,入浴,吸入療法(泉水は含重曹食塩放射能泉),呼吸体操等を,約3ヵ月間,ステロイド依存の難治性喘息20名を含む29名の成人患者に試み,発作改善と治療薬(含ステロイド剤)減量から,著効8例(27.6%),有効14例(48.3%),やや有効5例(17.2%),無効2例(6.9%),すなわち,有効率75.9%と発表し,つづいて最近,上記同様の温泉療法を行った成人患者30名〔ステロイド依存16例。重症17例,中等症13例。男12例,女18例〕では,男で著効5例(41.7%),有効5例(41.7%)であり,女で著効10例(55.6%),有効5例(27.8%)で,男女を合わせた有効例は25例(83.3%)と報告し,該患者群の脊景因子を調べ,温泉療法の有効性が高いのは,ステロイド依存,歴年令40才以上,発病年令30才以上,臨床病型(発作時呼吸困難の態様から分類)は細気管支閉塞型,また,アレルギー面からは非アトピー型,等にみられ易いと述べている。さて,喘息に対する温泉の効果には,去淡〔重曹泉・含重曹食塩泉は気道分泌物の溶解と線毛運動の回復にあずかる〕。硫黄泉は粘欄疲の喀出に良い。〕,呼吸機能の改善(単純泉で1秒量,%肺活量の増加)。温泉プール水泳訓練(泉質は単純泉)でX25等未梢の気道の換気能の改善。呼吸整調化。),抗感染・抗湊出(重炭酸土類泉のCaイオンが関与;重曹泉は肺血管中枢の過敏性をへらし肺循環における戸出・浮腫を軽減。〕,抗気管支れんしゅく〔食塩重曹泉が軽減)。〕,抗アレルギー内容に仏学派は抗ヒスタミン作用(ヒスタミン破壊でなくレセプターを抑制)もあげている。 抗アレルギー作用は既述のように,わが国の動物実験成績でも確認され,本作用に抗ヒスタミン作用を考えしむる成績もあるが推測しがたい成績もある。この点,Cooms及ぴGe11の分類でI型アレルギーに属する喘息の成立機序も,関与する,抗体(IgE,一部IgG),細胞(IgE抗体産生にかかわるリンパ球のB細胞や丁細胞,IgEレセプターをもつマスト細胞等),各種の化学伝達物質,を含め極めて複雑であり,かかる発症機序の構成要素のどれに温泉が作用するのか,とくにIgE抗体と温泉の関連を中心に,抗アレルギー作用の実態には今後解明すべき事柄が多い現状である〕,その他,副腎皮質機能の改善〔泉浴でコルチゾール上昇〕や白律神経機能の正常化,などが合わさり,病状の改善と疾病への抵抗力がもたらされると考える。 おわりに 代表的なアレルギー性疾患の保養地療法に関し若干記した。該疾患は完治に年余にわたるのが少なくなく,保養地療法は薬物療法を補完し病状改善と疾病からの回復力増強に有用であり,今後,さらに活用が望まれる。 参考文献 1)大島良雄:温泉とアレルギー.日温気誌,35:(3・4),3.1972. 2)大島良雄:南欧のラドン温泉とアチレアーレ.日温気誌,42:(3・4),181.1979. 3)大島良雄:温泉の医療効果.健康と温泉FORUM'88記念誌,9.1988. 4)野口順一:フランスの皮膚病湯治文献の紹介とその読後感想.日温気誌,45:(3・4),78.1982. 5)野口順一:フランスの皮膚病湯治文献の紹介とその読後感想.日温気誌,49:(4),187.1986, 6)阿岸祐幸:西ドイツの海洋・気候療法について.日温気誌,45:(1),27.1981. 7)阿岸祐幸:西独の温泉医学の現状.日温気誌,50:(1),1.1986. 8)谷崎勝朗:転地療法,鍛練療法,温泉療法.気管支喘息(宮本編),153,南江堂,1988. 9)大島良雄:温泉浴による変調の研究,ヒスタミン感受性の変化.岡山大温研報,(6),49.1952. 10)大塚正己:実験的喘息に関する研究,気管支の感受性に及ぼす感作,季節,運浴の影響.日温気誌,27:(3・4),129.1963. 11):岡本重幸:血中ヒスタミン分解酵素およぴDiamine Oxidase活性に関する研究,−とくにヒスタミン感受性との関係およぴ温泉浴の影響.日温気誌,29:(3・4),65.1966. 12)岡本芳正:泉浴のアルサス現象に及ぽす影響に関する実験的研究.九大温研紀要,4:(4),17.1952. 13)渡部文郎:飲泉のアルサス現象に及ぽす影響.九大温研紀要,9:(1),69.1957. 14)小嶋碩夫ほか:温泉浴の抗アレルギー作用に関する実験的研究.日温気誌,41:(3・4),67.1978. 15)七条小次郎:こんにゃく喘息に関する研究(第1報).北関東医学,1:(1・2),1.1951. 16)田中今朝昭:実験的こんにゃく喘息に関する研究.アレルギー,7:(6),542.1959. 17)中溝慶生:皮膚病の温泉治療.温泉医学(日本温泉気候物理医学会編),341,日本温泉気候物理医学会,1990. 18)野口順一:皮膚科系疾患の温泉療法.温泉医学(日本温泉気候物理医学会編),348,日本温泉気候物理医学会,1990. 19)木村秀人:皮膚と温泉.温泉医学(日本温泉気候物理医学会編),368,日本温泉気候物理医学会,1990. 20)日本温泉気候物理医学会・日本温泉療法医会編:温泉療養有効症例の調査報告書.13,目本温泉気候物理医学会・日本温泉療法医会,1987. 21)野口順一:我が国における皮膚病湯治の特異性.日温気誌,51:(1),3.1987. 22)野口順一:アトピー性皮膚炎患者の血液所見の水治療法による変化の推移.第53回日本温泉気候物理医学会総会報告,1988. 23)大島良雄ほか:「蕁麻疹研究会」中間報告−蕁麻疹に関する臨床集計成績.アレルギー,13:(5),299.1964. 24)矢永尚士:気候療法.温泉医学(日本温泉気候物理医学会編),102,日本温泉気候物理医学会,1990. 25)Smith,J.M.:Epidemiology and Natural History of Asthma, Allergic Rhinitis and Atopic Dematitis Allergy, Vo1.2(Middle tonetaleds.),771,Mosby,1983, 26)守上博資ほか:東北地方温泉地における湯治概況調査成績,XVI,秋田県玉川温泉における湯治概況ならぴにCMIを主とした医学的調査.日温気誌,30:(3・4).73.1967. 27)花竜良一ほか:東北地方温泉地における湯治概況調査成績,XVII,山形県今神温泉における湯治概況と医学的調査.日温気誌,30:(3・4),87,1967 28)酒井幸子ほか:湯治についてのアンケート調査,第1報,万座,猿ケ京、湯宿,川古温泉について.群馬衛研報,5:169.1973. 29)北川宏:いわゆるラドンセンター入浴者の実態調査成績.日温気誌,44:(3・4),117.1981. 30)大沢雄二郎ほか:気管支喘息と温浴の関係.第40回日本温泉気候物理医学会報告.1975. 31)Kolesar,J.etal:Changes of respiratory sens it ivitytocarbondioxide inpatients with bronchialasthmaduringhighmomtain climatic therapy. FYSIAT.REUMATOL.VESTN.50:(5),235.1972. 32)馬場実:気管支喘息の鍛練療法.気管支喘息とその周辺(宮本ら編),245,医歯薬出版,1983. 33)小林節雄ほか:気象と気管支喘息.臨床と研究,57:(10),3137.1980. 34)七条小次郎:気管支端息.日内誌,57:(7),731.1968. 35)神山恵三:気候保養学.温泉医学(日本温泉気候物理医学会編),79,日本温泉気候物理医学会,1990. 36)植田理彦:森林浴と地形療法.温泉医学(日本温泉気候物理医学会編),112,日本温泉気候物理医学会,1990. 37)加地正郎:気候療法概論.温泉医学(日本温泉気候物理医学会編),99,日本温泉気候物理医学会1990. 38)矢永尚士:呼吸器疾患の温泉療法.温泉医学提要(日本温泉気候物理医学会編),233,日本温泉気候物理医学会,1983. 39)谷崎勝朗ほか:気管支喘息に対する温泉療法の臨床効果とその特徴.日温気誌,48:(2),99.1985. 40)谷崎勝期ほか:呼吸器疾患の温泉療法−対象症例の背景因子−.日温気誌,52:(2),79.1989. 41)大島良雄:温泉療法.76,医学書院,1951. 42)小嶋碩夫:風呂と健康.190,地産出版,1976. 43)貴谷光ほか:気管支喘息における温泉療法の作用機序.第30回日本胸部疾患学会総会報告.1990. |
|||
REPORT一覧 | |||
Copyright(c)2004 NPO法人 健康と温泉フォーラム All rights reserved. |