温泉療法医がすすめる温泉|日本の名湯百選
霧島温泉郷
鹿児島県姶良郡牧園町・同霧島町
- 泉質
- (丸尾)単純硫化水素・硫黄・食塩泉 (林田)硫黄・明ばん・緑ばん・食塩泉
- 適応症
- 胃腸病
- 神経痛
- 切り傷
- 皮膚病
- リウマチ
- 神経炎
- 慢性リウマチ
- 動脈硬化症
- 糖尿病
- 病後回復
- 交通
- JR日豊本線霧島神宮駅バス30分。鹿児島空港から霧島林田温泉行バス1時間
“天孫降臨”の霧島、いま温泉療法のメッカ
「何たって神様のお膝元……。スケールのでっかいことは並のものではありません。地球が沸かしてくれた、お風呂がいっぱいありますよ……」と、いうのが霧島温泉郷である。全国各地でお祭りと言えば、おみこしが付きもの。その神興渡御の先導を務めるのが赤い顔の面をつけた天狗さん。その名を猿田彦命(さるたひこのみこと)と呼ぶ神様である。天照大神が孫である瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)に、神の国、高天原から降りて豊葦原〈日本〉の国を治めよと命じた神話“天孫降臨”の地が、ここ霧島連山の高千穂の峰で、瓊瓊杵尊は7人の神をお供に連れて降り立った。その時、道案内の先達をしたのが天狗さんの猿田彦命だったという故事に由来している。温泉療法についても霧島は先達を務めている。そのメッカ的存在が鹿児島大医学部リバビリテーションセンターである。
常識をひっくり返す研究
これまで重症の心臓病患者の温泉入浴は禁忌とされていたが、この定説を覆す温熱療法で驚きの好結果を生んでいる。鹿児島指宿の砂むしを世に出した田中教授を中心に、循環器、運動生理、リハビリの先生6人グループが慎重に臨床研究しているもの。その一人、堀切豊先生に話を聞いた。「高血圧症の心不全患者や拡張型心筋症患者に顕著な効果が出ている。温浴は末梢血管を拡げて血行が滑らかになる。心臓に負担をかけない方法で身体を芯からじっくり温めて血圧をコントロールするというやり方。重症患者は身体を動かすこと自体無理なので、寝たまま温浴するのが、それもベッドが上下するのでなく浴槽がエレベーター式で上下する。まだ60余例だが、悪くなったという人は一人もいない。心臓移植以外救いがないとされてきた重症者も段階的に改善し、中には見事社会復帰して仕事についている人もいる。極めて近い将来、重症心臓病の新しい治療法になるだろう」と、自身のほどをみせている。
坂本龍馬ハネムーンの地も
霧島温泉郷は林田、新湯、丸尾、硫黄谷、関平、湯之谷、栗川、殿湯、妙見、安楽、新川、隼人温泉など両手に余り、泉質も単純泉から硫黄・明ばん・鉄泉・硫化水素・食塩・炭酸・弱食塩・土類炭酸など数多く選りどりみどり、温泉好きの人にはたまらない魅力の地である。共に湯量豊富で、凄まじい勢いで噴き上げる地熱でリハビリセンターも、また源泉を持つ大旅館は揃って自家用地熱発電を設備、照明は勿論暖冷房、エレベーターに厨房などの電力すべてをまかなっている。林田・硫黄谷から溢れ出る温水は湯の滝となって川を流れ錦江湾に注いでいるが、話を聞いた旅行者から「勿体ないね」の声しきり。各温泉地では、これまでの歓楽型からそれぞれ特性を生かした健康保養の温泉地を目指している。山を少し下ったところに塩浸(しおひたし)温泉がある。集会や団らん場付きの町営浴場があって賑わっているが、温泉の歴史は古く慶応2年、寺田屋騒動で九死に一生を得た幕末の風雲児、坂本龍馬が恋女房お龍さんと新婚時代の場に選んだところ。龍馬も入ったという露天風呂が川べりに今も残っている。また近くには奈良時代政争に敗れてこの地に流された和気清麿呂公ゆかりの和気湯(わけのゆ)があり「これが露天風呂の元祖」と地元の人は言う。落葉を踏んでの小道は、またとない静かな遊歩道になっている。天保3年〈1832年〉神のお告げで霧島の南麓の渓谷で発見したという関平鉱泉は「傷を治すなら関平の湯」と昔からその効能が伝えられていた。「お湯に浸って傷が治るのだから飲めば胃の傷〈胃かいよう〉も治るのではないか……」と“飲む温泉”として人気が高まり、町営でパック詰めの健康清涼飲料水を発売して毎年ウン億円を稼ぎ出している。瓊瓊杵尊を祭神とした荘厳華麗な朱塗りの霧島神宮わきには高天原から降臨した神々の九面彫や陶芸、木工、それに桜島の灰を原料としたガラス工芸の実演も出来る憩いの民芸村がある。園内にはラドン含有の硫化水素泉の野天風呂があって入場無料。高血圧や糖尿病に効く、元気が出る人気の飲泉もある。
