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日本の温泉地再生への提言 [14] -第1グループ 旅館・温泉地リーダー これからの温泉利用のあり方について |
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中沢 康治 (草津温泉)株式会社中沢ヴィレッジ 副社長 |
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これからの温泉利用のあり方について 温泉地利用のあり方は昔も今も変わらない。その時代の人々の「日常生活の歪」を正し、本来の健康を取り戻すが役目と思われるので、その時代の日常生活の歪みを調べればいい。温泉地の「歓楽型」が節目に来たのは男性社会から女性中心に、集団中心から個人中心になり、又ここに別の歪みが発生したことで、現代の都会化ストレスに対応した楽しい健康回復プログラムが必要となったということである。現在の都会にない1)自然環境を提供し、都会にない2)食事を提供し、都会でやらない3)運動を行い、活力のでる4)考え方を提供する。これらを楽しく受け入れていただくためには、美しく気持ちよい自然、おいしい食事、楽しいウオーキングなどの運動、面白いお話、語り方、考え方などであろうか。 町並みの整備について なぜ温泉地の町並みを整備するか。多くの人々の、生活空間の都市化はいよいよ進行し、高層化し、便利になっていく。しばらくはこの西洋文明が進むので都会で生活する人達は、洋風都市化、過密化による公害やストレスを無意識のうちに抱えることになる。これを解消するには環境は自然であり、和風に対する憧れになるだろう。中はともあれ和風の外観を持つ街並みが望ましい。これは外国からのお客様にも喜ばれる。 長期滞在型の温泉地利用について もう何十年も前から欧米のような長期滞在にならないかを模索したが最近、欧米と少し事情が違うのではないかと気がついた。 ヨーロッパは大陸続きで、夏になると北欧方面から南欧のリゾートへ行く。何千キロも、何日もかかる。アメリカ大陸も北アメリカから南のリゾートへ行くのにも同様である。中国大陸でも移動したいのだがヒマラヤ山脈がこれを阻んでいるが他にも貧困問題がある。欧米人のこの行動は、空中を移動できる渡り鳥がシベリヤから東南アジアまで行き、また移動できる手段を持つ虫達が季節によって大移動する「渡り行動」と似ている。何故渡り行動するかはよく分からないが避寒行動であるらしい。人間も容易に移動できるならば本能的には移動して暖かいリゾートへ行きたいのだろう。夏休みの期間も渡り鳥の滞在する期間と同じように考えられる。一部の欧米人のように2、3ヶ月もリゾートに滞在するようになればもう渡り鳥のようにリゾートの生活が日常化する。渡れない人たちが暖房装置を考え出した。日本列島では南に移動すれば直ぐに海になってしまい渡れないので頭を使ってその場で生活できる文明を発達させた。しかし本能としての憧れは暖かいことである。日本には欧米の暖はかい南のリゾートの代わりに暖かい温泉地が全国に2500箇所も点在する。これが温泉リゾートだ。アイスランドとも似ているが渡り鳥のように何千キロも飛ばなくても2,3時間で年に何回も行ける。長期に滞在する必要はない。このことは日常的なストレスを解消するには最適で、日本人が世界一長生きなのは「温泉リゾート」の存在の為かも知れない。したがって西洋の長期滞在リゾートの真似はしなくていいと思う。しかし移動交通手段が安くて容易になればリゾートのある生活は一般化・日常化するだろう。この傾向はリゾートのロケーションが首都圏に近いほど強く出るだろう。 ユニークな地域特性 地域の努力であるが、昔の町並みを外見だけでも復元する必要がある。もちろん不要な電柱は取り除き、都会を思い出させる建物は出来るだけ排除する。次に大切なのは清掃である。ゴミは要らない物で、捨てるべきものでしかも汚い。観光地の最大の敵である。清掃で培われたサービスをしよう。最も大切なのはおもてなしをするわれわれの心である。 年に何回もお越しくださるのだから 心をこめておもてなしをしよう どんなご馳走でも 心がこもっていなければ お客様はお喜びにならない どんな山海の珍味よりも 近くで採れる山菜などを 心を込めてお出しすれば お客様は喜んでくださる 年に何回も来てくださるのだから こころをこめておもてなしをしよう お客様の喜びが我々の喜びなのだから リゾート改革の取り組み 問題はリゾートにつきもののシーズン波動である。週末やシーズンは稼働率の変動が大きいことである。嘗て全盛だった団体旅行が大幅に減って個人客市場になった。生産工場では少品種大量生産が多品種少量生産になり、単能工から多能工に切り替えて生産性を向上させたのに、サービス業は相変わらず流れ作業による分業体制をとっていることにある。このため労働の生産性が極端に悪い。さらに「汚い・つらい・きつい」の3K作業を外国人アルバイトやパートに依存し、時給が安いといって、お皿洗い・お掃除・お部屋メンテなどの基本業務を遣りたがらないので、外注人件費が嵩み、能率向上や内部教育ができず、肝心のお掃除によるおもてなしの心が出来ないのが最大の欠点である。 分業の欠点はまだまだある。 1 作業が単純化し楽に出来るので、易きにながれ、多くの人は努力をしなくなる。 2 昔はゴミ拾い専門の人が居たほどで、作業を分ければ分けるほど人手が多くかかる。 3 社長、専務、常務、部長、課長と別れるとお互いにかっこよさばかりを追求して自分は動かずに人に動いてもらおうとする。机に座っていてばかりでは役に立たない。 4 フロント係、フロント会計、ナイトフロント、予約係り、企画係りとそれぞれが独立していて融通が利かない。 5 お客様にも上司にも「担当ではありません」と逃げてしまうので、大変なサービス低下や能率低下につながる。 6 担当以外のことは分からない偏った人材ができる。 7 ちょっと難しい仕事だとすぐに専門という外注に出してしまい外部流出が増える。 8 各部署で応援を頼むのは恥と思い、自分の課に余分な人を入れて応援を頼まない体質がある。 9 各部署で、応援に出すと、余分な人を抱えていると思われるので意図的にヘルプに出そうとしない体質になる。 10 各部署で公休、トイレ休憩、食事のために予備の人手を用意するので部課が増えるほど全体に無駄な予備要員が増える。 対策は 1)30ある部課を10以下に統合する。 2)何でも出来る多能サービスマンを養成する。 3)社員全員にて、現在外注で行っている客室の清掃作業を自社で行う。 4)応援を要請する部課を評価する。 5)他部門の仕事を積極的に習得することを奨励する。 6)部課長の積極的な働きを促す。 7)年功序列や国籍差別を行わず広く多能な人材を登用する。 8)お客様第一主義を徹底する。 現在進行中である。 |
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