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フォーラムレポート

「健康と温泉フォーラムやまなか」総括報告書

健康と温泉フォーラムやまなか
参加者一同


「健康と温泉フォーラムやまなか」第一日目は、日本を代表する三味線奏者、本条秀太郎氏のオリジナル舞踏曲「雪の山中」が凛と響き開幕した。健康と温泉フォーラムやまなか実行委員会の上口昌徳会長と同じく主催団体の健康と温泉フォーラム実行委員会会長白倉卓夫氏による主催者挨拶、環境省大臣官房審議官の小沢典夫氏および地元石川県知事 谷本正憲氏による来賓挨拶が続き、開会式は無事終了した。何年ぶりかの大雪に見舞われた山中町の社会教育文化会館は清麗な雰囲気のもと、続いて、文化講演が行われた。直木賞作家で1988年、白峰村に「白山麓僻村学校」を開校するなど、地域越しにも取り組んでいる高橋治氏が「小さな新聞記事が教えてくれるもの」のタイトルのもと、昭和30年代の街並みを住民主導で再現した「昭和の町」をオープンさせ、成功した九州の小さな街づくりをエピソードに人間再生の場として温泉地のあり方に関する文化講演が行われた。初日最後には、国際的な温泉地として有名なイタリアのアバノ市のジォバンニ・ポンキオ市長による「官民一体となった温泉地づくり」をテーマに基調講演があった。通訳を通してみっちり2時間以上、イタリアのアバノ温泉の歴史的背景、その発展に欠かせなかった官民一体となった様々な施策等が講演された。平均滞在日数が8日で年間350万人以上の顧客が訪れるアバノ温泉の魅力が分かりやすく事例を説明され、滞在型を指向するこれからの日本の温泉が実際に学ぶべき課題と問題を多くの参加者が熱心にメモをとっていた。

交流レセプションは1800時から、翠明桂御苑内宴会場で行われた。全国から参集した、温泉地リーダー、自治体、旅館オーナー、温泉療法医など約200名の参加者が、山中節や踊り等、地元のパフォーマンスを楽しみ、意見交換、地元情報の交換等積極的な交流の場となった。小宴の間に、故中沢晁三氏に大島賞が地元実行委員会 上口会長に功労賞がそれぞれ授与された。

二日目は午前、午後に分け二つのパネルディスカッションが開催された。午前は「21世紀の健康センター:滞在型温泉保養地をめざして」をテーマとして、元環境省で温泉行政を担当し、現在、健康と温泉フォーラム実行委員会常任理事の井上昌知氏がコーディネータとして登場、5人のパネリストが紹介され、各自の専門の立場での課題に対する取り組みの具体的な報告がなされた。
宮城県鳴子温泉の温泉療養部会委員長の高橋亨氏は「療養型滞在客を呼び込むには、自ら地域に見合った変化を真剣に検証する必要性がある。そして、その地域性に見合った変化が、一度失ったものを再度呼び戻すという大変な作業であるなら、来て欲しい客にまずなにを、どのようにアピールすればよいのか、その一点を地域全体で共通認識まで高め、さらに確実に実行することが、最重要課題である」と鳴子温泉の事例を紹介。「幸いなことに、鳴子には変わる必要のない湯治宿が数多く残っていた。バブル期、増築に励む観光型施設を羨望の眼で見ながらも、必死に歯を食いしばり自分の背丈で生き、農魚村の客と一つ屋根の下、共に大事な温泉を守り続けてきた湯治文化が色濃く残っている。しかし、そのことは変わることを拒み、意識的に自然体を装っていたといえなくも無い。本来、自然体が無意識のなせる業だとするならば、意識して自然体を装うことは、時代の流れに対する逆行をも意味する。この意味において、鳴子における温泉療養プランは、“復元”を目指し、まさに逆行の末たどり着いたものといえるだろう」と締括った。
パネリストの2番目に登場した、地元山中町の田中寶町長は滞在型温泉地へ整備をすすめている様々な取り組みを紹介した。
1)昨年3月に町が移譲を受けた国立山中病院は、地域密着型の医療機関「山中温泉医療センター」として再スタートした。療養病棟を新設し、高齢者医療にも力を注いでいる。リハビリテーション機能も充実させ個性的な地域医療を提供する施設として期待が高まっている。
2)昨年10月には、町の温泉保養施設・ゆけむり健康村ゆーゆー館はトレーニングルームを使ったフィットネスクラブ「FITNESS-You」を開設、プールや温泉など既存の施設をフル活用し、予防医学として、健康づくり運動を積極的に展開しており、インストラクターも配置して、きっちりした態勢が整ってきたこと。
3)農村振興策として、中山間地域の東谷・西谷地区では観光客が農村生活を体験できるようにして温泉旅館とも連携させ、長期滞在型の癒しの町にする。都市住民の多様なニーズにきめ細かく対応するとともに、農山資源や農林水産業などと連携・調和したグリーン・ツーリズムの推進を図ることは、今後の地域づくりに大きなきっかけとなる。休廃業旅館3館の再生・活用方針も固まり、今、山中町は大きく変わろうとしている。
4)休業中の旅館はギャラリー等の公営文化施設として、また、民間活力の導入により「高齢者向け優良賃貸住宅」としてそれぞれ整備される計画であること。同じく町が買い上げた旧「山中グランドホテル」は、「道の駅」「生活習慣病患者の宿泊施設」「分譲マンション」として整備する方針である、とその意気込みを語った。

続いて、勝木グループ(医療法人社団勝木会、財団法人北陸体力科学研究所)企画広報部長小見豊氏は「温泉」は癒しの本家本元として、私たち日本人はとにかく温泉が大好きである。 日常の会話に「癒し」が頻発し、癒し系の音楽や顔といった形容詞もあちこちで飛び交う「癒しブーム」なのである。いま、その本家本元としてもてはやされるのが「温泉」である。そして、その拡大する温泉保養地ニーズに対応するため、温泉地は積極的に工夫と知恵で新しいニーズに対応する一歩を踏み出す勇気が必要だと強調。 こうした期待と願いを前提にして、<健康保養>の短期滞在型モデルプランを提案。実際の厚生労働大臣認定健康増進施設である財団法人北陸体力科学研究所が大手食品メーカー健保組合と連携して行なった「はつらつ健康セミナー」の実際を紹介。「温泉地は健康保養地であり、その社会的ニーズは大きく広がっている、まずは何から手を染めるか、地固めの第一歩を踏み出すことが肝要である。目標は高く、大きく、実行は一歩一歩着実に、ということだと思う」と締括った。

 続いて、石川県山中温泉医療センター長 高橋一郎氏は奈良時代から累々と続く山中温泉の歴史的背景に触れ、時代を越えた山中温泉の魅力を、山中温泉独特の伝統を、現代の山中医療センターに復元しようとする熱い思いを語った。
又、滞在型温泉地を目指して山中町の試みとして、山中町が目指す滞在型温泉保養地構想は宮城県鳴子温泉にその原点を求めたこと。廃業中の隣接ホテルの後利用についても、民間資本と医療機関による老人賃貸宿泊施設として叉、その一部が低料金で長期滞在が可能な施設として整備し、山中町の進める温泉地興隆プランの一翼を担う施設となり得ると語った。最後にバブル崩壊後のスローライフあるいはスローリビングを指向する温泉客にどう対処したらいいのかについて、魅力あふれる温泉に加えて滞在型温泉保養地を目指す山中温泉で、医療機関がどのように関わり合えるかについての提言を試みた。

最後のパネリストである北國新聞社論説委員長堀喜代治氏は、現代の人たちがお風呂に求めるものとして「癒し」、「健康」、「家族を大切に生活を楽しむ」の三点を挙げることができる。そして、この三つのキーワードは温泉地にそのまま当てはまることが分かる。すなわち、温泉地は癒し、健康の場として、また、家族のやすらぎ・憩いの場として既に見直されており、これからもそのような場として注目され続けるだろう。温泉地の原点に戻り、現代の「湯治場」として再生しようと提案。ストレスの発散、運動、食事・栄養という健康づくりの三要素をバランスよく提供できるのが温泉地であり、その本質的な機能、役割を十分に発揮させて滞在型の保養地にしていくことは、これからの温泉地の生き方として重要である。と指摘した。
そして、湯治とは、旅館などにこもり、温泉につかることだけではない。外に出て歩くことも健康づくりに大事であり、湯治客を外出に誘う仕掛けや環境整備も必要であろう。その一環として、そぞろ歩きの楽しめる温泉情緒あふれるまちづくりを求めたい。魅力ある温泉地の風情は、日帰り客や立ち寄り客をも引きつける。まちづくりと温泉地振興策を一体的に進めるべきだと締括った。





午後12:30分から、イタリアのアバノ市の温泉協会のマッシモ・サビオン会長が「治療からベネッセ(健康づくり)〜転換をはかるイタリアの温泉」をテーマに講演を行った。
185の温泉があるイタリアの多くの温泉地は社会保険を用いるいわゆる社会的療養客が主流で全体の72.1%がこういった温泉治療を目的とした国内外の療養客だ。近年ヨーロッパ主要温泉国の保険制度の改正によりこのいわゆるコンサバティブ・マーケット(既存マーケット:72.1%)は年々衰退し、美容や保養の為に、自己経費で滞在するプリバート・マーケット(個人マーケート:20.5%)と病気予防・健康づくりを目的に温泉地に滞留する(ベッネッセ・マーケット:7.4%)が急増しているのが近年の特徴だと指摘。またアバノ温泉がその急増している個人、ベネッセマーケットに早くから取り組んできたこと。そして、今後、この温泉の国際市場(グローバリゼーション)と個人・ベネッセマーケートにいかに対応するか、他のイタリアの温泉地に先んじたメリットをいかに優位に展開できるかはアバノ・モッンテグロット温泉の最大の関心事だ。今回の来日に際し、日本とイタリアの温泉地の比較において、感じた事として、「日本の観光的温泉地のあり方も、観光から健康づくりへとそのサービスシフトが転換していくように見える。治療からベネッセ(健康・美容)へ転換を図るイタリアの方向とはある意味では逆ですが、相互に大いに参考になると考えている」とその講演を締括った。

午後のメインプログラムであるパネルデスカッション「温泉保養地の再生と創造」はコーディネータの奥村明雄(健康と温泉フォーラム実行委員会副会長)氏の発表につづき5人のパネリストの発表があった。

奥村明雄コーディネーターは今空前の「温泉ブーム」が進行しているが色々なところで問題が噴出していると指摘。現在の温泉地を取り巻く問題状況として、1)温泉資源の保全と温泉の適正な利用のあり方。2)少なくとも当面3日程度の滞在型利用の促進とそのための社会の仕組みや制度の改善、旅館・ホテルの経営のあり方の改革、滞在型の温泉地への環境改善。3)温泉地自体を滞在型保養地としての様々なニーズに応えられる国際的なレベルに合ったものに再生していく必要。4)温泉の保養と健康づくりへの利用を促進することである。例えば、半年に1回程度、1週間程度のまとめ休暇を取れるようにするなど企業サイドでの支援を求めたり、ヨーロッパ諸国に見られるように医療保険の温泉保養への適用を進めたりするなど制度的な支援が欠かせない。中高年齢者の健康・保養の場として温泉地を再生し、活性化を図っていくことは、社会全体の活性化につながるばかりでなく、製造業の発展途上国への移転が続く中で、地域の産業としての観光業を活性化し、雇用の安定を図る上で大きな意義があると考える。関係者の総力を結集し、また、国や地方自治体の重要な政策として、総合的な政策を確立し、温泉地の再生と再創造を進めていかなければならない時期に来ているのではなかろうか、と問題提議した。

続いて山中温泉観光協会の上口昌徳会長は、「永い歴史ある温泉観光地の多くは急速な拡大と繁栄の道を歩み続けてきたが、山中温泉も例外ではなかった。しかしやがて日本はバブル崩壊という長期的低迷の時代に逢着し、全く明るい展望のないまま今日を迎えている。山中温泉の歴史をふりかえって、日本で「湯治場」即ち「温泉場」は古来より、人々の心身の癒しを求める旅の目的地であった。貴賎を問わず、薬効著しい風光明媚な温泉地へは繁くその旅が行なわれた。千三百年の歴史をもつ山中温泉はまさしくその地であった。山中の地には多くの文人墨客が訪れたが、芭蕉が「奥の細道」の道すがら、山中を訪れ厳しい長旅の疲れを癒し、温泉の薬効の著しさに感嘆の声を上げるのだった。山中の湯に入れば薬草の菊を手折るまでもあるまいと、「山中や菊を手折らじ湯のにほい」の名句は余りにも有名である。又、山中は北前船の船頭衆が、命がけの旅を終え、心身の疲れを癒す、長逗留の場でもあった。「山が紅うなる木の葉が落ちる やがて船頭衆がござるやら」こううたわれる山中節の名調子はこの船頭衆が、北の海への航海と共に北の国からもたらしてくれたものである。このような山中温泉の伝統と文化を土台にして、二十一世紀百年を生き抜く温泉観光地として、経済効率優先の結果生じた、大きな歪みを認め反省することからはじめ、「全体の繁栄があって個の繁栄がある」を掲げてその緒についている」と報告。さらに「温泉町のかもし出す日本の原風景、更に大都市では全く失われてしまい、地方の町や村であればこそ求められる。水や緑や空気の清冽さ清澄さを何よりも大切に守り続けて行くことが必要であり、大都市の人々の人間蘇生の場としての尖兵の役割を温泉観光地は持たなくてはならない」と山中温泉の未来を展望しその決意を表明した。

二番目のパネリストとして、群馬県草津町長中澤敬氏が紹介された。中澤氏は草津の温泉地としての発展の成り立ちを説明したあと、まず指摘したのが1)観光振興における組織づくり、人づくり、であるとし観光地を支える組織づくり、人づくりが重要であること。2)快適空間の創造による、歩きたくなる観光地づくりとして、まちのシンボルである湯畑周辺のさらなる快適空間の創造を目指し、まちの広場でもあり、まちの本当の中心であると云えるようにして行きたい。そして。草津町は、長期的には「温泉と高原・文化とスポーツの国際温泉リゾート地」つくりを目指していて、その基本として、温泉街らしさを残しながらも洗練された快適空間を創造するための総合的な基本方針「歩きたくなる観光地づくり」を策定し、温泉と健康、温泉とスポーツ、温泉と文化の街づくりを進めていること。二つ目には、温泉と並ぶ新たなアクティビティの形成でスポーツの町を目指す。3)また、これからの観光地づくりを進める上で環境対策は最も重要な課題であると認識している。環境に配慮したまちづくりを目指したい。4)ONSENを国際語に積極的海外との交流を図る。5)泉質主義として温泉の原点にもどって、保養、療養の伝統を維持、継承したいと纏めた。

三番目のパネリストは朝日新聞論説委員、佐柄木俊郎氏で、新聞を通した国民の意識と視点を基本に下記の様な提言があった。
「日本のいまと未来を示すキーワードは、私は「ダウンサイジング」だと思います。具体的には日本の人口減です。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、日本の人口は06年に1億2774万人でピークに達し、以後はじりじりと減り始めて、2050年には1億人と、1967年ごろの水準にまで下がります。つまり、日本はもう再来年から確実に人口が減る時代に入るのです。人口が減るだけではなくて、人々の懐具合もそうです。経済統計をみると、家計の消費支出は平成10年度(1998年度)以降、ずっと前年比減となっています。その中に占める旅行関連支出の割合は、さらに減少傾向にあります。温泉地をどう活性化するかという課題を考える場合も、個々の事業体がどういう戦略をとるかはともかく、ダウンサイジングというマーケット的視点が大切でしょう。時代に合わなくなった無駄なサービスなどは省き、デフレ時代の顧客のニーズに適合させること。きめ細かで気持ちのいいサービスを低廉で提供する工夫をこらす、といった道筋が求められるのではないでしょうか。いずれにせよ、「ダウンサイジング」をただ悲観するのでなく、また、いずれ何とかなるさなどと楽観視するのでもなく、避けられないファクターとして直視することから物事を考えていくのでなければ、これからの時代は乗り切れないと思います」と締括った。

4番目のパネリストとして日本政策投資銀行/地域企画部企画審議役、傍士銑太氏による、金融と地域再生と言う観点から伊豆の旅館の再生をモデルケースに貴重な提言があった。「日本全国にはたくさんの温泉地があり、そこには観光産業の基盤としてたくさんの旅館・ホテルが営まれています。この中で、本業のポテンシャルは高いものの経営の失敗等から、過去に行った不動産投資や副業の不調で債務超過に陥り、本業の成長が阻害されているところがあります。日本政策投資銀行は、その政策的価値・事業的価値に着目して再生の可能性を見極めた上で、経営者・株主・債権者それぞれが応分の負担を果たしながら合理的な再建計画に基づいて本業の発展が見込まれると判断し、伊豆の老舗旅館:落合楼再生の骨子は、1.経営者の刷新 2.金融機関を交えた原価管理の改善 3.不振の東館閉鎖と本館・眠雲亭による小規模高級志向への転換でした。この落合楼の再生を可能とした条件には次のことが考えられる。伊豆という温泉地の高い“地域ブランド”と旅館業という“基盤産業”の明確な存在。落合楼が“地域の中心的・象徴的な存在”であったこと。若くて戦略性のある地元出身の“経営者”がすぐにスカウトできたこと。本館・眠雲亭という歴史的・文化的に“良質な資産”とそれを通じたお客様との深い関係(つながり)が残されていたこと。経営の中に入り込んで財務面他で日常タイムリーなモニタリングや資金繰り等全面的な支援ができる優良な“地元銀行”の存在が欠かせない要素であった。今回のケースから学べることは、これからの温泉保養地の再生や創造にとって肝要なことは,地域の発展と個の発展が密接に結びついた地域全体のビジョンづくりにあります。叉、温泉地が持続可能な地域となるためには,住民の一人一人がどのような町に住みたいのかを考え,地域全体のビジョンをつくることから始める必要がある。地域のビジョンの存在によって,地域内の各プロジェクトが有機的な意味を持ってつながりあったときに,一つ一つの政策が活かされて,投資家の心理を動かすことになるのではないでしょうか」と全国の温泉地再生への課題を提言した。

最後のパネリストは 環境省大臣官房審議官(自然環境局担当)小沢典夫氏で「温泉の保護と適正な利用のために」というタイトルで温泉の所轄官庁としての立場からその現状と課題についての最新の報告があった。1.温泉の保護と利用をめぐる状況、温泉源と温泉利用の状況。温泉源は、全国的に見て、源泉数は増加傾向だが、ゆう出量は頭打ち〜減少ぎみ。最近の傾向として、掘削深度が深部化、一部で温泉源の枯渇化。温泉の利用は、全国的に見て、温泉利用宿泊施設は増加傾向だが、宿泊利用者は頭打ち〜減少ぎみ。最近の傾向として、日帰り温泉利用者の増加、温泉旅行形態の変化。2.利用者・国民の視点から、国民の温泉志向は、根強い(行きたい旅行で5割、行った旅行で2割)。日帰り温泉利用が増える一方、温泉らしい温泉(温泉・温泉情緒・自然環境)への希望が強い。レジオネラ肺炎事件で、衛生管理への不安、循環利用への不信。3.温泉事業者・温泉地域の視点から、団体旅行対応で宿泊施設を大型化し、宿泊客減少で稼働率低下。大型化のため循環濾過方式を導入したが、衛生問題で不評。温泉資源量の制約、枯渇問題が山積している。
これらの問題を検討するため「温泉の保護と利用に関する懇談会」を新に設置、関係団体、有識者から積極的な意見を集約し、今後の適切な行政に活かしたいと、総括した。

井上昌知、奥村明雄両コーディネータ、およびパネリスト、会場の参加者との間で多くの質疑応答があり、午前、午後のパネルデスカッションは終了した。
引き続き、山中温泉旅館の若手経営者の集まりである「あすなろ会」のメンバーによって、二日間の討議、提言を全国にむけ発信すべく「やまなか宣言」が発表され、全ての会議日程が終了した。



やまなか宣言

温泉は、わが国が持つ類まれなすばらしい資源である。この資源の持つ力を十分に引き出し、活用しなければならない。
私たちは、今、国民の貴重な共有財産である温泉資源を保全しながら、これまでの伝統を踏まえつつ、現代の医学やその他の健康科学等を前提にして、真の意味での適切な活用を図っていかなければならない。また、高齢化の進展など多くの課題を抱えている日本の社会に対し、温泉の活用によって何ができるかということを真剣に考えなければならない。さらに、国際交流が活発化している今日、わが国の温泉を世界に紹介し、広く世界の多くの人々に知ってもらうことも極めて重要な課題と考える。
私たちは、このような認識の下、この二日間、古い歴史と文化そして湯治の伝統を持つ名湯、山中温泉に集い、これらの課題に応えるべく、熱心な討議を行った。私たちは、今こそ、私たちの智恵と力を結集して、温泉資源の持つ真の力を生かした温泉地づくりに邁進すべき時であることを深く認識し、次のことを宣言する。
1 温泉資源を適切に保全し、温泉の持続的な利用に努めるとともに、温泉の利用者に対し、温泉や温泉地に関する適切な情報を提供し、これらを正しく評価し、活用できるようにしよう。
2 温泉地は、ゆとりと安らぎを提供する場でなければならない。また、国民皆が温泉を楽しめるようその町の歴史と文化に根ざした個性ある温泉地づくりを進め、温泉地の再生を図る必要がある。このため、周辺環境の保全に努めるとともに、個性ある町並みの創出、公園、歩道、各種スポーツ・文化施設の整備、魅力ある文化プログラムや有能な指導者の養成などを推進し、ゆったりと滞在できる温泉地の形成に努めよう。
3 現代の医学に基づき、温泉の効能、効果を正しく認識するとともに、医療機関や健康事業とも連携し、温泉地を健康と保養の場として活用しよう。このため、各分野の専門家を結集し、「温泉保養地学」を確立しよう。
4 全国の温泉地、世界の温泉地との交流と相互の情報交換に努めるとともに、世界の多くの人々にも日本の温泉の良さを楽しんでもらえるよう、国際的な温泉地の形成を進めよう。
5 今回のフォーラムの成果を生かしつつ、温泉関係者のみならず、広く町民、ボランティア、行政関係者が一体となって、山中温泉地の再生と活性化に努めよう。
2004年1月27日
健康と温泉フォーラムやまなか
参加者一同



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