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温泉保養地環境

温泉地環境の保全

奥村 明雄
NPO法人健康と温泉フォーラム 副会長


はじめに

わが国では、温泉といえば、まず頭に浮かぶのは、お風呂そのものや、豪華な温泉旅館の施設、きめ細かな配慮の行き届いた従業員の接客態度、贅沢な山海珍味の料理などである。然し、そもそも何のために温泉を利用するかといえば、病後回復のため、健康づくりのため、ストレスの解消のためと考えてくれば、施設そのものも重要ではあるが、そこへ行くこと、すなわち温泉地自体へ行くことが重要であることはいうまでもなかろう。わが国では、バブル時代の団体旅行の中で、温泉地という考え方がすっぽりと抜け落ちてしまったのではないかとも考えられる。ヨーロッパでは、温泉施設よりも、温泉地が重要と考えられ、温泉地の指定が優先されている。伝統的な温泉地は、ドイツでは、バード、フランスではバン、イギリスではバースと呼ばれ、そのこと自体が温泉地の優良マークとして理解されている。わが国でも、改めて、温泉地自体が問われなければならないのではないかと考える。以下の小稿においては、温泉地のあり方を踏まえた温泉地の環境保全の重要性について述べてみたい。


1 温泉地に何が求められるか

わが国では、そのことがよく理解されていないが、まず温泉地があって、そこに温泉施設があると考えるべきであろう。その際、そもそも温泉を訪ねるニーズはどこにあるか、また、そのための温泉地に求められるのは何かが問われなければならない。

(1)まず第一に必要なのは、温泉が豊かであり、温泉成分が他にない特異性を示していることであろう。
温泉法では、温泉の定義は、「地下から湧き出す水、水蒸気、ガスで温度が25度c以上あるもの」、又は「決められた18種類の成分のうち1種類以上を基準以上含んでいる、あるいは総量が基準以上ある」ことが要件となっている。温泉の効果についてはいろいろの見解があるが、温泉の温熱効果を否定する人はいない。その意味で、ある程度の温度があることは必須の要件と考えられる。ただ、温度があればよいということならば、わざわざ温泉へ行かなくても身近なお風呂や銭湯でも良いことになる。てじかにあること、毎日でも利用できることを考えれば、温泉よりも良いということにもなろう。市街地や市街地に近い日帰り温泉が人気を博するゆえんであろう。

しかし、温泉には、様々な温泉成分がある。それが皮膚を通して様々の化学作用を及ぼす。従って、化学的含有成分がきちんと所定量以上あり、さらには、そのレベルが他の温泉地に比べて高く、また、そのレベルがきちんと維持されている場合には、優れた温泉地としての条件を満たすものと考えられよう。

(2)第二に重要なのは、周辺の自然環境が優れており、また相当の広がりを持って保全されていることが重要であろう。
温泉の健康保養効果は、薬物療法や手術などと競い合うものではなく、これらの療法を補完するものと言われており、一般的には「総合的生体調整作用」といわれている。

温泉地へ出かけるということは、それだけで今まで生活していたスタイルを離れ、非日常的な環境に身をおくことになる。これまでの生活の中での様々なストレスや生活リズムのゆがみから解放されることになる。そして、温泉浴や自然の環境、自然の中での運動などにより、様々な刺激を受け、ゆがみや生体リズムの正常化がなされていくことになる。

その際、自然環境は大きな影響を及ぼすことが知られている。山の温泉地では、山の高度が影響を及ぼす。1000メートルを越える高山では、日射量や紫外線量が多くなり、気圧が低くなって、呼吸機能が増加するなどの影響がある。

高山でなくても、樹林に覆われた温泉地では、気候が温和で、樹木に汚染物を吸収する働きがあるといわれており、フィトンチッドなど植物から放出される物質が空気を清浄なものにする効果があるといわれている。また、良い香りの発散や騒音がないことなど精神的な安らぎ、ストレスの解消に大きな効果を持つ。

優れた景観は、日常のストレスから精神を解放し、すがすがしい気分と明日への活力をもたらす効果があり、都会人の病んだ精神を健やかにしてくれる効果がある。

また、海の温泉地では、湿気があり、多くの塩分を含んでいる。夏は涼しく、冬は暖かく、気温の差が少なく、保護的である。新陳代謝や心肺機能も高まり、自律神経系の安定化が見られる。

(3)第三に重要なことは、登山、サイクリング、ウオーキングなど自然の中での健康づくりの適切なスペースが確保されていることである。
糖尿病や高血圧など慢性的な生活習慣病は、運動不足に起因することが多い。都会の中での運動もいいが、大自然の中で、良い空気を味わいながら、変化に富んだ地形の中で、適度な運動を行うことの効果は大きい。温泉地には、そのようなスポーツができる様々な施設が整備されていることが望ましい。また、こうしたスポーツを行う際には、体力や体調に合わせた適切なメニューが重要であり、温泉療法医やスポーツ指導者の存在が重要となろう。

(4)日常の仕事の中で、すり減らされた神経をゆったりさせ、正常な状態に回復していくためには、趣のある街並みの中を文化的な香りに浸りながら、ゆったりと散策することの意味は大きい。せっかく訪れた温泉地が都会と同じせせこましい雰囲気では、心のねじを緩めることにもなるまい。その意味では、都会にない非日常の感覚にゆったりと浸れる情緒のある温泉地であることが望まれる。それぞれの地域の歴史、文化、工芸を背景に他にない独特の街並みを形成することは、温泉地の差別化にとって極めて重要な課題であろう。また、街なかで、伝統的な工芸に触れ、自ら体験をすることなども精神の安らぎをもたらすことになろう。


2 ドイツの「温泉保養地」の指定の仕組み

先に述べたように、ドイツでは、古くから温泉地の指定制度がある。ドイツのバーデンバーデン、オーストリアのバードガスタインなどが有名である。昨年筆者が尋ねたベルリン近郊のバードザローは、80年前の1920年代に「バード」の指定を受けているという。

筆者が、昨年バードザローを訪問した際、このバードの要件はどうなっているかについて、尋ねたところ、同市の市営テルメの社長であるワルター氏の答えによれば次のようなことが要件とされるということである。




     公営テルメのワルター社長と対談

(1) 第一に、当然のことであるが、治療に役立つ体にいいものがあることが要件となる。これは、温泉の泉質ガ良いというだけではなく、泥パックに使う泥、あるいはきれいな空気でも良いということであるので、温泉がメインではあるが、例えば、海岸の保養地で行われるタラソテラピーも対象となり、温泉に限らないことになる。要するに、気候療法の対象となる場所がすべて含まれることになるようだ。なお、きれいな空気については、公的な検査が行われるとのことであった。

(2) 第二に、クアパーク(公園)があることが要件とされる。例えば、バーデンバーデンでは、クアハウスや飲泉場の周りは美しい芝生に囲まれた大きな公園となっており、また、川に沿ってゆったりとした散策ができる緑道が続いている。バードザローでも道路と湖の間に大きな公園があり、多くの人が日光浴を楽しんでいる。また、湖に沿って延々と続く散歩道が作られており、散策を楽しむ人が多い。

バードザローの美しい公園

(3) 第三に、地域全体に車の乗り入れが禁止され、域内では安全に散策がゆったりと楽しめるようになっていることが要件とされる。バーデンバーデンでもバードザローでも、街中の外に大きな駐車場(バーデンバーデンでは、地下駐車場)が設けられている。

(4) 第四に、音楽ホールなどの文化施設、図書館があることが要件とされている。また、同様の観点からインフォメーションセンターがあることも要件とされる。これらの要件は、基本的には、温泉保養地での滞在が長期であり、一定のメニューに従って行われる温泉療養の余暇を飽きさせないために、各種の施設が設けられ、各種の行事が行われることが前提となっている。インフォメーションセンターでは、温泉地の施設の紹介や温泉療法医の指導により、一定のメニューが創られるといったことがあると考えられる。さらに、インフォメーションセンターが発展し、各種の娯楽施設が併置されたり、カジノが設けられることもある。

(5) 第五に、大変重要なことであるが、温泉保養地には、最低一人のクアアーツ(温泉療法医)が常駐することが要件となっている。温泉療法医には、4週間の講習への参加が義務付けられているとのことであった。

(6) 「バード」のタイトルは、州が与えることとなっており、2段階になっている。第一の段階は、単なる「ハイルバード」(療養泉といった概念)であり、次の段階は、例えば「テルマーレ・ソ−レ・モア」(食塩・泥泉といった概念−日本でいえば、食塩汚泥泉)ということになるという。


3 わが国の国民保養温泉地制度

(1)ドイツの「バード」に類した制度としては、わが国では、国民保養温泉地制度がある。この制度は、温泉法14条に基づき、「温泉の公共的利用の促進のため、温泉利用施設の整備及び環境の改善に必要な地域として、環境大臣が指定する」こととなっている。ドイツに倣って、温泉地の整備を本格的に行おうとした規定ではないかと考えられる。

1954年に制度がスタートし、2003年現在では、91箇所が指定されている。
(2)指定の要件は、以下の10項目となっており、これをグループ分けすると次の5つのグループに分けられる。

1) まず、第一のグループとして、温泉そのものに関する三つの要件が定められている。第一は、温泉の効能が顕著であること。第二が湧出量が豊富であること。第三が利用上適当な温度を有することとなっている。数ある温泉の中で、優れた泉質を持ち、湯量豊富な温泉地が指定されることが想定されている。

2) 次に、環境的な条件が設定される。第四の要件は、環境衛生的条件が良好であることであり、第五の要件は、付近の景観が優れていること、第六の要件は、温泉気候学的に休養地に適していることが要件とされる。

3) 三つ目のグループは、地域的条件が設定されている。第七の要件は、交通が比較的便利なこと、第八の要件は、災害に対し安全であること、の二つの要件である。ある程度大規模な利用が行われることを前提に設定された要件である。

4) 四つ目のグループは、施設的要件である。第九の要件は、適切な医療施設・休養施設が整備されていることとなっている。

5) 五つ目のグループは、顧問医の設置である。医学的立場から適正な温泉利用・健康管理について指導を行う顧問医が設置されることが要件とされる。

(3)1981年からは、国民保養温泉地の中から保健的利用に適した温泉地を抜き出して指定し、「国民保健温泉地」の制度がスタートしている。2003年現在では、21箇所が指定されている。

この場合には、国民保養温泉地に次の二つの要件が追加される。

1) 「泉質が特定の疾病に対して優れた療養効果を有していること」として、特に療養効果と強調している。

2) 「医師の指導のもとに温泉の保健的利用ができる施設が設置されていること」として、一定の保健活動を行う施設が前提とされており、保養温泉地に比べて、積極的な保健活動を想定している。

4 ドイツの「バード」とわが国の温泉地制度との比較

これまで述べてきたドイツの制度、わが国の制度を比較してみると、つぎの3点が指摘できる。

(1)まず第一に、わが国では、温泉法の制度であるため、当然のことながら温泉地以外の保養地は含まれていない。これに比べ、ドイツでは、保養地医学的見地から海浜や湖など他の保養地が含まれており、より広い概念となっている。その点わが国では、他の要素があまり重視されていない点が問題となる。

(2)第二に、わが国では、国立公園など自然保護の制度との関連が深く、優れた自然環境が存在することが要件として強調されている。ドイツの比較的平坦な地形とわが国の山がちな地形といった温泉地の所在に関する両国の国情の違いが現れたのであろう。他方、ドイツでは強調されている街並みの整備や公園の確保、図書館や文化施設などは、伝統的なドイツの地方分権的な体制と長期滞在による湯治を前提としたものと考えられる。わが国では、城下町をのぞいては、街道沿いにまちが形成され、まちづくり自体についての意識が低かったため、温泉地の要件の中でも、あまり触れられていない結果となっている。この点は、日本とドイツの考え方との間には、かなりの開きが出ていることが見て取れる。

(3)第三に、温泉療法医の設置(要件上は顧問医)などは日本もドイツも同様であり、さらに、わが国でも、「国民保健温泉地」の場合は進んで、「保健利用ができる施設」ということで、ヨーロッパ風の「テルメ」の設置が想定されており、ヨーロッパ風の考え方を導入使用する意欲がうかがわれる。




   バードザローの湖沿いの静かな散策路


5 わが国の温泉環境の整備のあり方―まとめ

以上の検討から、わが国の温泉環境の保全と整備のあり方について、筆者としての考え方を述べ、まとめとしたい。

(1)まず第一に、「温泉保養地」という考え方をもっと広く普及させる必要がある。私ども温泉と健康フォーラムが、これまで20年近くにわたり主張し、各地で行ってきたフォーラムの行事を通じて展開してきた考え方は、バブル崩壊後の温泉地の低迷の中では、これからの温泉地のあり方の一つとして理解が深まりつつあるように思われる。基本的には、温泉を健康と保養のために活用すること、そのために温泉の湯量と泉質を維持していくこと、温泉そのものと温泉地を切り離さず、温泉気候医学的見地から周辺環境の保全活用を図り、少なくとも4泊5日程度の滞在を前提とした滞在型温泉地を整備していくことである。

         バードザローの公営テルメ
         

(2)このためには、第二に、温泉地周辺の自然環境を厳正に保全していくため、各種の法制度を活用するとともに、必要に応じ、地域における条例や地域的取り決めなどを定めるなど可能な限り努力していくことである。豊かな湯量と優れた泉質を持ち、豊かな自然環境に恵まれた温泉地は、気候療法の場として、また、日常からはなれてストレスを解消する場として貴重な公共財産である。幸い日本の温泉地の多くは、深山幽谷の中にあり、その多くが国立公園や国定公園などの中にあるか、隣接しているところが多い。ただ、残念ながら、温泉街そのものは既に開発が進んでいるため、規制対象地域には入っていないところが多いが、周辺の自然環境が保全されてこそ、優れた温泉地たることを忘れてはならない。国立公園などの自然公園以外の市街地周辺の温泉地についても、都市計画法の風致地区制度や森林法、農用地保全法などを活用し、できるか限り自然環境が保全されるよう努力すべきである。

また、温泉水の質と量の保全も重要である。温泉も資源のひとつであり、資源としての温泉水は、有限であることに留意する必要がある。温泉の利用が過大になり、温泉の湧出量を著しく越えて利用が行われれば、温泉の枯渇につながることは当然である。特に、温泉地の後背地としての自然環境が伐採などによって、大きく損なわれれば、温泉水の涵養を阻害し、温泉の湯量や泉質に影響を与えることにもなりかねない。そうした資源保全という観点からも自然環境の保全は極めて重要であることを付言したい。

(3)第三に、温泉地を情緒溢れる街並みとして整備していくとともに、長期滞在による温泉保養が行われる場として整備していくことである。温泉法では、第14条に「環境大臣は、温泉の公共的利用増進のため、温泉利用施設の整備及び環境の改善のために必要な地域を指定」することができることとされ、同法第15条では、「前条の規定により指定する地域内において、温泉の公共的利用増進のため特に必要と認めるときは、温泉利用施設の管理者に対し、温泉利用施設又はその管理方法の改善に関し必要な指示をすることができる。」こととされている。また、この指示については、同法施行規則第7条に基づき、「あらかじめ環境大臣の定める施設の整備及び環境の改善に関する温泉地計画に基づいてこれを行うものとする」とされており、公共的財産としての温泉地について国が計画に基づき積極的に関与することが規定されている。ドイツやヨーロッパの温泉地を見ると、地方自治体が多くの土地を所有し、必要に応じてその土地を民間企業に売却し、全体として秩序ある地域整備が行われ、そのことによって美しい町並みが形成されているところが多い。わが国の自然公園制度においても、集団施設地区の制度があり、利用の拠点として秩序ある整備と美しい街づくりを目指している。温泉法における集団施設地区に当たるものが環境大臣による地域指定と温泉地計画であると考えられる。


湖に面したバードザローの町の配置車は街中に入ってこない形になっている
しかし、残念ながら、この制度は十分初期の考え方が活かされているとはいえない状態であり、その見直しと実効ある整備が求められる。そのためには、長期滞在を前提とした地域全体の整備計画がその財源計画とともに立てられるとともに、地域全体の総意の下で、地元主導で立てられるよう制度が運用される必要がある。

(4)第四に、長期滞在型の温泉地整備に向けて、社会的システムが整備される必要がある。わが国の温泉地では、その主な利用の仕方は、依然として1泊2日の利用が主流であり、ヨーロッパ諸国のように長期滞在型とはなっていない。これは、需要サイドの問題が多いが、供給サイドの問題も無視できない。需要サイドでは、企業の休暇の取り方が欧米に比べて少なく、またまとまった休暇の取り方も少ないことが問題であろう。年に2回程度、少なくとも4泊5日くらいの健康休暇の制度化が望まれる。また、温泉地への交通費、宿泊費用の高さも問題である。ヨーロッパでは、農家民宿など極めて低料金で、1週間単位の施設の貸し出しが行われている。高齢化の進展の中で、高齢者の夫婦の利用が増加しており、そのような人々の長期滞在型での利用を促進する上で、長期滞在者には思い切って安くするような連泊割引のシステムが広く普及することが望まれる。

また、供給サイドの問題としては、1泊宿泊を前提とした豪華な施設と豪華な食事を売り物にする姿勢である。特に食事については、利用者の選択が事実上できないとか、連泊しても同じような料理が提供されるとか、そもそも長期滞在型のシステムになっていないことが問題であろう。利用者の選択という意味では、街中では、昔からの専門料理店があり、そこで食べるのが普通であるのに、温泉地に行くと食事は必ず宿にくっついているというのは理解できない。その意味では、泊食分離は、避けられないと考える。思い切って実施すれば、町の活性化という面でも大きな効果が出よう。

また、長期滞在型の利用を促進するためには、温泉地の環境整備が欠かせない。1泊の滞在ならば、街並みも周辺の自然環境もどうでもよいかもしれないが、3日、4日滞在するとなれば、レクリエーションを楽しむ場、健康づくりの場、文化を楽しむ場がどうしても必要になってこよう。そして、何よりも町全体のイメージ、もう一度来てみたいと思う街の雰囲気づくりが重要になってこよう。

こうした街づくりのためには、入湯税を基幹とする財源措置が不可欠であろう。また、自治体や国も、公共的財産である温泉地の機能を高め、国民や遠来の外国の人に活用をしてもらうためにも、一定の助成や融資制度をきちんと整備することが求められる。

さらに、高齢化社会の進展に伴い、医療保険制度や介護保険制度においてもその制度の維持保全を図るため、積極的な健康づくりへの給付を行うことが必要であろう。ヨーロッパ諸国では、医療保険からの給付が認められており、そのことが温泉地への基礎的な需要を高める意味で大きな効果がある。今回検討されている介護保険制度においても筋力トレーニングなどの保健施設事業が取り上げられており、ぜひそうした方向を温泉地と結び付けて制度化すべきであろう。

        バードザローの明るい公園


あとがき

すでに述べたように、温泉の利用目的にさかのぼれば、温泉地を離れて温泉施設だけが一人歩きすることはできないし、温泉地の整備と保全なくして、温泉地の繁栄はありえない。これまで、バブルの中で、とかく、個々の施設の大型化が叫ばれ、温泉地自体の保全整備や街並みの活性化が無視される嫌いがあった。いまや、再生を目指す温泉地は、温泉地の本来の使命という当たり前の理屈に戻らざるを得ないことを強調してこの小稿を終わりたい。


参考文献

1)財団法人日本温泉協会「温泉必携」平成2年度版
2)日本温泉気候物理学会「新温泉医学」中 25p植田理彦「温泉療法概論」
3)飯島裕一 「温泉で健康になる」岩波アクティブ新書22
4)後藤哲也 松田忠徳「黒川温泉観光経営講座」光文社新書




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