Home 健康と温泉フォーラムとは 事業 組織
会員オンライン 情報ファイル お問い合わせ
REPORT一覧

その他の研究会(過去の実績)

温泉法改正を願う
−温泉の正しい活用こそ根本的な課題−


白倉 卓夫
NPO法人健康と温泉フォーラム会長


泉質表示問題をきっかけに、温泉をめぐる論議が活発化している。多くの論者が指摘するように、正しい泉質表示は、信頼確保の不可欠の前提である。かけ流しか、循環式かの別、加水、加温の状況なども含め公開を原則とすべきであり、浴槽も含めた成分分析が頻繁に行われるべきである。さらに、「温泉成分が一滴でも入っていれば良い」などといった主張がまかり通ることのないよう、専門家の参加を得て、温泉の定義、温泉の適応症について、きちんとした評価が行われることが急務である。 しかし、より根本的な課題は、温泉の枯渇をいかに防ぐか、これまでのような歓楽型でない、健康と癒しのための温泉地をどうつくっていくかということである。永年にわたり、全国各地で「健康と温泉フォーラム」を開催し、古き、良き湯治の伝統を現代に復元することを訴え続けてきた我々としては、この機会に、温泉のあるべき利用の仕方にまでさかのぼって国民的論議を深め、そうした論議に立って温泉法の改正を行うことが望まれる。 課題の第一は、温泉資源の保全を図ることである。源泉は、ここ20年の間に4割増加しており、一見すると、温泉資源は豊かになっているように見える。しかし、温泉の多くは、掘削に依存しており、自噴の源泉の割合は3割程度まで低下している。1000メートルを超える大深度掘削も目立っており、枯渇後も、泉質や効能の宣伝を続けるという信じられない事例があるなど問題は深刻である。今こそ、大切な温泉資源の利用のあり方を見直し、持続的に、賢く活用すべきであり、温泉生成の地形、地質的機序に関する調査の実施や新規掘削に一定の制限を加える仕組みの導入が急がれる。 課題の第二は、温泉地の整備である。わが国の温泉地は、利用客の減少に苦しんでいる。温泉地の再生は、地域経済の再生からいっても欠かせない。わが国では、ヨーロッパ先進国に比べ、温泉地の町並みや公共施設の整備の立ち遅れが目立つ。旅館の中に施設を取り込み、お客の囲い込みを行った結果、温泉街が廃れ、街の古い情緒が失われたところも多い。また、健康づくりと保養の場として温泉を活用する場合、医学的に見てある程度の滞在期間は不可欠であり、ヨーロッパ先進国では、わが国とは違い、2〜3週間の長期滞在が普通である。温泉地では、緑豊かな自然と美しい街並みの中に飲泉施設、医療施設、公園、スポーツ施設、コンサートホール、公共駐車場など各種の施設が設けられ、車の利用も制限され、退屈しないで、ゆったりとした長期滞在の保養を享受できる。 超高齢社会のわが国でも、伝統的な湯治場を新たな時代に即して復元し、当面少なくとも4日程度の滞在型温泉地を目指したい。このためには、優れた温泉地の計画的整備を進める、温泉法による「国民保養温泉地制度」を実効あるものにし、国や自治体の支援を受けて、個性ある町並みの創出や各種の施設の整備を推進するとともに、ヨーロッパで行われているような温泉地での保養に対する医療保険制度の適用や医療費控除制度の充実を図り、長期滞在を促進する必要がある。



REPORT一覧
Copyright(c)2004 NPO法人 健康と温泉フォーラム All rights reserved.