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	日本の温泉地再生への提言 [２]　-第１グループ　旅館・温泉地リーダー 温泉地の文化力 地域ブランド向上を目指す
	奥村　武久 （道後温泉）大和屋本店　代表取締役
	道後温泉は日本最古の温泉郷として、歴史と伝統文化を誇りにしている。 　神代の白鷺、大国主命伝説から西暦５９６年に来浴されたといわれる聖徳太子の温泉碑や、万葉集と熱田津の古代、源氏物語にある「伊予の湯桁」、石手寺創立の平安期、一遍上人と宝厳寺の鎌倉期、河野氏と湯築城の室町戦国期、松山藩と明五院による温泉経営の江戸期、そして明治27年に現在の温泉本館が完成し、平成5年温泉施設としては日本唯一の国指定重要文化財に指定された。 　この歴史と伝統・文化を継承すると共に、今日温泉地に求められる健康と癒し・賑わいと楽しさを活かした温泉郷づくりを目指す取り組みを始めている｡ 温泉地の再生のあり方について 　温泉地間競争が激しい今日、地域特性を活かしたま、ちづくりと共に、価値ある宿づくり・店づくり・地域の文化（文化力のある人）･ブランドの強化が求められている｡特に東京の「大江戸温泉物語」「東京ドーム天然温泉スパラクーア」等、大都市にテーマパーク型温泉が数多く出現し、温泉新時代を迎えた。他の産業同様、温泉においても中央と地方の大競争時代を迎えた。 （１）歓楽型から健康保養型温泉地づくりについて 　歴史の古い大規模温泉地は、男性天国歓楽地と化し、衰退に向かい、大型旅館が数多く休廃業するところとなった。今日では退去の反省のもと、温泉地本来の目的を認識し、過去の反省とまちづくりの取り組みにより、歓楽地型であることの問題点は解消されつつある。各旅館の体質も改善され、団体中心から個人客・家族を重視する施設とサービスを取り入れている｡私見としては、全ての温泉地が一様に健康保養地になるべきではなく、歓楽の賑わいと楽しさの新しい型は必要であり、温泉地の立地や環境特性を考慮して取り組むべきと考える。 　都市を都会化するということが言われるが、都会とはファッション・グルメ・エンターテイメントのあるまちである。人口1万人の町が、日本の伝統文化を守り、情緒を保ちながら、都会的魅力を併存している例がある。（由布院等） （２）温泉地の環境整備について 　温泉地の立地は、自然環境に恵まれたところが多い。グリーンツーリズム・サスティナブルツーリズムの時代といわれる今日、環境を守ることで優位性が発揮できる｡農業や食品にみられるトレーサビリティにより、地域ブランドを確立することが可能な時代になった。 　地方の温泉地も都市化され、歴史的町並みの景観が悪化して来ている｡ 　まちは住む人と来る人によって成り立つ。生活者のみを重視すると、利便性・合理性を追及し、景観や情緒が失われる｡又、観光客のみを対象にする宿やまちは、外来者にとっても魅力がない。招客の基本があって、お茶やお花を始めとする文化が生まれる｡景観は美意識と価値観のない人には理解出来ない。価値観の原点は比較力を身につけることである。まちづくりの手法は自分の目先の利益のみを求める人に対して、説得・納得・道徳である。美意識と価値観を持った文化力のあるリーダーの存在が不可欠だ。 （３）長期滞在型の温泉地づくり社会的な休暇利用のあり方について 　社会制度や法律が出来ても、日本人は長期休暇を取る習慣文化が身についていない。国のリゾート対策も失敗に終わった。3連休制度も1日又は2日に集中し、充分機能していない。 　高齢化やスローライフの時代を迎えているので、徐々に長期滞在型の温泉地や宿が増加してくると思われる｡それぞれの旅館で、滞在客対策を進めているが、宿の最大の商品は空間の連続と時間の継続だという考え方が必要であり、料理や料金、もてなしだけの問題ではない。 （４）温泉地活性化のために 地域や自治体はどう取り組むか 　温泉地の最大の課題は、温泉の質と量であり、浴場の健康的・文化的価値である。共同浴場のあり方も重要である。温泉地によって事情が異なるが、温泉システムの再構築が急務である。 　最後に今日国民の温泉に対する関心と価値観は、予想以上に高くなっている。弊館における年会費5万円の会員制度は希望者が多く、入会を中止している｡ 　足湯は無料のため、地域の人々が毎日訪れている｡松山市は人口48万であるが、近年10ヶ所以上の温泉施設が誕生し、活況である。シティホテルも温泉施設を持つ時代になった。 　温泉の健康的・医療的効能を伝えることも大切であるが、我々温泉に直接関係する業界や経営者が、広く情報を得て認識を新たにしなければならない。
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