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日本の温泉地再生への提言 [17] -第1グループ 官庁・自治体

世界的な温泉場を目指し、ONSENを世界語に

中澤 敬
(群馬県) 草津町長


草津温泉の概要

「草津よいとこ 一度はおいで」で知られる草津温泉は、江戸時代に出版された諸国温泉番付には、常に大関としてランクされ、天下の名湯として全国に知られ栄えて来ました。
 明治時代に訪れたドイツ人医学者ベルツ博士により、草津温泉のもつ素材(環境と泉質と入浴法)が世界第一級のものであると世界に紹介をされました。
 草津の人々は、代々にわたって博士の教えを実現するために、江戸時代のすぐれた文化の復元と、新しい温泉保養地の創造により、日本一元気な温泉地をめざし取り組んでいます。

意見・提言

 今の日本のまちは、どこも中心街が衰退していると云うのが大きな問題である。郊外にショッピングセンターや住宅地などが出来て、まちの真中の商店がシャッター通りみたいになり、それをどうするか、すごく大きな問題であると思う。
 幸いにも、草津町では、まちの中心である湯畑℃りが健在であり、住民も訪れる観光客も「このまちの中心はあそこ」だと云うことが分かっていただいている。これは大変大きな財産であると思っている。今後も、まちのシンボルであると同時に、まちの広場でもあり、皆がそこに集まり、そこに行くと人がいて経済活動が行われており、まちの本当の中心であると云えるようにして行きたい。 私ども草津町は、長期的には「温泉と高原・文化とスポーツの国際温泉リゾート地」つくりを目指しており、その基本として、温泉街らしさを残しながらも洗練された快適空間を創造するための総合的な基本方針「歩きたくなる観光地づくり」を策定し、実現するための様々な施策・事業を展開しているところである。
 その一つは、温泉を健康と結びつけることにより、活力をもたらしたい。 標高1.200mにある草津温泉を取り囲む高原台地は、ベルツ博士の推奨した、清涼な空気と水、強酸無比の温泉と云う気候や地形など自然環境による療養と時間湯≠ノ代表される高温泉治療が特長である。
 近年、国民の健康意識の高まりや高齢者医療費の増大等で、疾病予防や健康づくり対策が強く要請され「健康日本21」、「健康増進法」が制定された。 生活習慣病の予防、治療には、温泉の効果だけでなく、観光そのものが予防医学の一環だと思っている。観光を推進することで、医療費の増大を助けることにもなると思っている。
 また、これからの観光地づくりを進める上で環境対策は最も重要な課題であると考えている。今までにも、草津町の豊富な温泉を活用し、温泉熱交換による温水の各戸給湯、道路融雪や施設の暖房など高度利用を行っており、各方面から評価を受けているところである。今後も温泉はもとより、様々な新エネルギーの可能性について調査研究に取り組み、エコタウン化を目指したい。
 二つ目には、温泉と並ぶ新たなアクティビティの形成でスポーツの町を目指す。  草津には、スキーは草津≠ニいうコマーシャルソングがある。58年冬季国体の時に作られたものである。
 草津にスキーが持ち込まれたのは早い。明治の末期に軍事技術のひとつとして日本に導入されたとのことであるが、大正3年には早くもスキークラブが結成され、翌年には町民スキー大会が開かれている。
 当時の草津の人の生活は、冬住み≠ニ言い、秋になると村里に下りて冬を過ごし、春を待って上ってくる。そうした生活習慣が行なわれていた。
 草津の人達にとって、冬(雪)は忌むべきことではあっても、けして楽しむものでは無かった。以来80有余年、我々の先輩たちは、鉱山の索道を利用して、スキーリフトを作り、軽井沢からの草軽電鉄を利用し、東京から団体客用スキー列車を走らせ、その列車のヘッドライトをナイター照明とし、夜間スキー場とした。これらは皆日本で最初の試みであった。スキーは生活の糧となり、観光資源として、草津の発展に大きく貢献して来た。
 その過程で、荻原健司,次晴兄弟の素晴らしい活躍は、私達にとっても誇りであり、草津の文化の一端はスキーによって育まれて来たとも云える。
 然しながら、昨今のスキー産業は、大規模スキーリゾートの開発、少子化、レジャーの多様化など様々な要因に加え、経済不況とあいまって、苦境にさらされている。スキー離れは世界的な傾向にあると言われている中、装置産業であるスキー場は、施設の維持管理に追われ、新たな投資はとても出来ない。
 その中で、テレマークスキーや、また、ツアースキーなどゲレンデスキー以外の楽しみ方が増えている。冬山の自然を楽しむ、スローライフな生涯スキースポーツを見い出して行きたい。
 また、冬のスキー以外に、草津にJリーグを目指したクラブチーム「ザスパ草津」がある。サッカー専門学校を母体とするサッカーチームから地域主体のチームに衣替えし、一時はメンバーが減り存続が危うくなるが、地域での支援体制が整い、平成14年春に新たに発足。選手達は夜は旅館や商店で働きながら練習を積むというユニークな仕組みを持つ。このことが共感を呼び、マスコミに注目され、多くの若者が集まる。
 Jリーグの基本は、地域が支えるクラブチームをとのことであるが、メインは、大企業に支えられている。その中で、「ザスパ草津」が目指すチームつくりは大きな試金石となる。MJが視野に入った今、まだまだ取り組むべき課題は沢山あり、産業界、住民を挙げての支援体制を作り上げて行きたい。
 他にも、今後目指したいのは、標高が高いという草津の地理的条件を活かした高地トレーニングや、温泉とスポーツ医学とのドッキングなどの面で様々な需要があるはずであると考えている。
 三つ目として、草津には、温泉街、すなわちクラシック草津エリアと、高原リゾート地帯をニュー草津エリアと云う二つの要素があり、そこにスポーツと音楽を絡めて、四本の柱としている。
 夏になると、高原に美しいクラシックの旋律が響き、湯の町草津を一新する。夏期国際音楽アカデミー&フェスティバルである。世界各国から著名な音楽家を招き、日本の若い音楽家を指導して戴くもので、多くの聴衆に育てられ、今年で24年目になる。さらにジャンルを拡大して、例えば、クラシックだけでなくポピュラー音楽も含めるなど、さらに充実させて行きたい。高原にも湯畑に匹敵するような人が集まり賑わう空間を創る必要があると考えている。
 このように、洋風と和風、両方とも徹底しているところに草津の特長があると思っている。これが出来ている温泉地は極めて少ない。
 このたび、ビジット・ジャパン・キャンペーンの一環として、JR東日本、JALとのプロジェクトを「草津バウンド」と名付けたインバウンド商品がスタート。 今までも草津は、ベルツ博士の意志を継ぎ、国際観光リゾート地を目指し、博士の生誕地との姉妹都市を1962年に結び、現在4ヶ国との姉妹都市交流や、世界の音楽家が集う音楽アカデミーフェスタの開催、ドイツロマンチック街道を範とした日本ロマンチック街道の設立など、地域の特性を活かした観光ルートの設定と各種プロモーションや情報の発信を行い外客誘致の促進を目指してきたが、外客の訪問動向として、姉妹都市交流や各種イベントを通してのコンベンション・インセンティブでの来訪の他、外客は伸び悩んでいるのが現状である。
 今回のプロモーションとして、温泉≠日本のアイデンティティとして、よく言われるHOT SPRING≠ナはなく、ONSEN≠ニいう言葉で世界にアピールしたい。日本は、温泉が豊富な土地であり、旅館に泊まり、和食を食べ、大浴場に入る。そんな温泉地に日本の文化が宿っていることを世界に知って貰うには、ONSENをそのまま使うのが一番と思っている。温泉文化を世界に広げることは、海外客の誘致になるのは勿論、大きく言えば、国として平和で対等な関係構築にもなるのではと思う次第である。


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