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日本の温泉地再生への提言 [24] -第1グループ 官庁・自治体

時巡り温泉祭

古庄 健介
(佐賀県) 武雄市長


武雄市の概要

 武雄市は、佐賀県の西部に位置し、ゆたかな自然環境に恵まれた歴史的にも由緒ある「温泉と陶芸のまち」です。市内には楠の巨木や数々の史跡・名勝・文化財などがあり、陶芸や民族芸能の伝承にみられるように独特の文化の香りをとどめています。
 また、リゾート地域の指定を受け、温泉と健康・保養、スポーツなど多彩な機能を有する観光リゾートとしての整備を進めてきました。しかし、近年は、宿泊者数などの観光客数は、伸び悩んでいます。定住人口の増大が望めない現在、地域の経済を活性化するためには交流人口の増大が必要であると、新しい取り組みを始めました。

○美・フレッシュプロジェクト
 武雄市では、平成13年に策定した第4次武雄市総合計画で7つの重点プロジェクトを掲げています。その1番目の「美・フレッシュプロジェクト」は、「美人の湯」として親しまれてきた温泉を多目的に活用し、観光資源である陶芸や自然、歴史、文化、競輪、農業などを融合させることにより、美と健康を中心としたブランド化を図るというものです。
 このことにより、地域間の交流や交流人口の増大、地域経済の浮揚につなげていきたいと考えています。

○武雄市温泉活用推進協議会
 そこで、昨年5月に官民協働の組織である「武雄市温泉活用推進協議会」を設置しました。協議会では、温泉を活用した新しいまちづくりの方策を検討し、最終的には具体的な活性化プランを提案していきます。これまで、旅館や観光関係者、医師、農業生産者など各分野で活躍されている若手を中心とした幹事会で、現状把握や温泉活用アイディア、事業計画案などについて議論を重ねてきました。その際には、福岡のまちづくり支援のNPO法人にもご指導していただいたところです。
 その結果、「まず、できることからやってみよう」ということで、温泉活用推進モデル事業を企画しました。この事業は、協議会のメンバーを中心とし、市民の協力者なども含めた実行委員会により、今年の9月から11月の期間、「ノスタルジー武雄 時巡り温泉祭」として実施しているところです。

○「ノスタルジー武雄 時巡り温泉祭」とは?
 時巡り温泉祭は、「温泉のある暮らし」をコンセプトに、訪れる人と住む人が、ふれあいを通じ、自分自身の時巡りを見つけ、リフレッシュする。そんな武雄の魅力を堪能していただくための体験プログラムです。
 プログラムは、それぞれのテーマにより「美の時巡り」・「味の時巡り」・「知の時巡り」の3つに分かれています。各プログラムは、次のような内容で実施しています。

○美の時巡り
 ここでは、温泉を活用した健康づくりを中心に実施しています。
 温泉の特性である浮力・抵抗・水圧・水温を活かした全身運動によるエクササイズの講座は、介護や生活習慣病などの疾病予防を図るプログラムとなっています。市民の健康はもとより、観光客にも活用いただけるよう宿泊プランも用意しています。
 また、アロマ(香り)による癒しのひと時を楽しむアロマセラピーや、気軽にできるストレッチやウォーキング・リズムダンス、足湯とマッサージを組み合わせたプログラムなどを実施しています。

○味の時巡り
 ここでは、温泉と農村地域などの連携や、「食」などをテーマに、実施しています。
 武雄の焼き物と、市内のお茶と菓子もてなす「武雄のやきもの喫茶」では、温泉に入るお客様などに、お風呂上りのひとときをゆっくりとくつろいでいただいています。 温泉と農村地域との連携では、花摘み(今回はスイトピーの花です)体験をし、花に囲まれたなかで市内旅館の松花堂弁当食べ、最後はゆっくり温泉に入るというプログラムを実施しています。来年度は、親子が泥んこになって行なう「じゃがいもづくり体験」など、土に触れることによる健康づくりを企画していく予定です。

○知の時巡り
 武雄は1300年の歴史を持つ武雄温泉と400年の伝統を持つ武雄のやきものを中心に、(今も数本の巨木が残っているように)恵まれた自然環境の中で発展してきたまちです。
 400年前から独自に発達した武雄のやきもの歴史と価値に光を当て、その素晴らしさを広く情報発信し、これからの武雄の陶芸振興を考える「武雄焼ファンの集い」や武雄温泉を訪れた方に灯ろう作りなど、一味違った陶芸体験を提供する「マイ武雄焼創作」。
 3月に復原された文化財の温泉新館を舞台に温泉ややきものにスポットを当てた企画展や照明で浮かび上がった新館をバックに開催する月1回のミニコンサート「湯のまえステージ」。
 温泉街や周辺を散策して武雄のお宝をさがすイベント「泉都武雄の神隠し」や、歴史・自然・史跡など歩いて巡るウォーキング「歴史・自然ヘルシーウォーク」など6つのプログラムを実施しています。

○今後の取り組み
 時巡り温泉祭は、県・市の補助金や企業からの協賛金を財源にイベントとして期間限定で始めましたが、年間通してできるプログラムがこの中から少しでも多く生まれていけばと考えています。また、たくさんの市民の皆さんにもこの温泉祭に参加していただき、まち全体で観光地としての「もてなし」ができればと考えています。今後もこの取り組みを継続させることにより、温泉地としてのブランド化をめざします。




温泉地の再生のあり方

1)これからの温泉利用のあり方
 今後の温泉の利用については、昔の湯治場のような役割を果すような整備が必要であると考えています。昔から温泉は、農作業など仕事の疲れを癒す場として、また、人と人とのふれあいの場として活用されてきたと聞いています。それについては、現代の日本人のDNAにも受け継がれているのではと感じます。
 湯布院町は、観光客がたくさん訪れる 温泉地として有名です。そういう面とは別に、温泉を住民の健康づくりに活用し、医療費の削減や介護保険料の据え置きなどに結びつけていることを昨年知りました。これこそ、今後の温泉利用の向かうべき方向性のひとつではないでしょうか。
 武雄市では、このように他の自治体の取り組みなどを参考にさせていただき、平成15年度より、温泉の特性である「浮力」、「抵抗」、「水圧」、「水温」を利用した健康づくりの講座を始めました。この講座により、日常生活が快適に過ごせる筋力バランスを調整する基礎を参加者に学んでいただくというものです。今後も、温泉という地域資源を健康と保養に活用する施策を展開できればと考えています。
2)温泉地の町並みの整備
 今現在、施設整備は費用の面で困難な面があります。しかし、町全体で温泉地として観光客への「もてなしの心」をもつことにより、その町の特色を活かした町並み整備・周辺環境の保全に結びつけることが重要であると考えています。

3)長期滞在型の温泉地利用
 武雄市では、上記で述べました健康づくりの講座の宿泊プランを15年度計画しましたが、残念ながら参加者は集まっておりません。それは、宣伝不足や内容にも課題があると思われます。しかし、温泉地における長期滞在型に対する考えが、現在の社会には浸透していないのが現状ではないかと感じています。まずは、長期滞在型として時間堪能ができる体制づくりなど内容の充実を図る必要があると考えています。それと保険適用や休暇制度のあり方などの社会的な制度の整備も望まれるところです。

4)温泉地活性化のため
◇住んでいる人々が、自分の町を愛し、暖かい心で訪れた人々をもてなす。
◇温泉だけでなく、歴史・伝統・自然など地域資源を活かしたプログラムを具体化し、提供する。
◇情報発信しながら具体化したプログラムを実行し、常に評価・検討加えて推進していく組織・体制づくり。
◇まち全体での温泉地活性化の取り組み。 などが必要と考えます。また、行政の役割分担としては、体制づくりへの支援・情報提供・情報発信等に対する支援(物質両面)に努め、民主導の実施体制づくり、人材確保が必要であると考えます。

5)その他
 今後も温泉地に関する情報の提供をお願いします。


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